第6話:初めての冒険、そして温かいコメント

 配信を終えた後、しばらく放心状態だった。


 リビングのソファに座り込んだまま、ぼんやりと天井を見つめている。


 本当に、今日のことは現実だったんだろうか。


 420人もの視聴者。150人の登録者。温かいコメントの数々。


 初めてのダンジョン探索。ゴブリンとの戦闘。ソルとの連携。


 すべてが夢のようだった。


「ソウタ、ダイジョウブ?」


 膝の上のソルが、心配そうに見上げてくる。


「ああ、大丈夫。ただ...信じられなくてな」


 ソルを優しく撫でる。


 プルプルとした感触が、これが現実であることを教えてくれた。


「俺たち、本当にやったんだな」


「ヤッタ! ソウタ、ガンバッタ!」


 ソルの明るい声が、胸に響く。


 そうだ。これは現実だ。


 俺は、配信者としての第一歩を踏み出したんだ。


***


 気持ちが落ち着いてから、配信のアーカイブを確認することにした。


 パソコンの画面を開き、録画された映像を再生する。


 画面に映る自分の姿。


 最初は緊張していたけど、ダンジョンに入ってからは、徐々に自然な表情になっていった。


 特に、ソルと話している時の俺の笑顔は、本当に楽しそうだった。


「ああ、この辺りは良かったな」


 ゴブリンとの戦闘シーンを見る。


 カメラが揺れて、少し見づらいところもあるけど、臨場感はある。


 ソルの動き、俺の動き、そして連携。


 客観的に見ても、悪くない戦いだったと思う。


 コメントも、改めて読み返す。


『すごい!』


『連携完璧じゃん』


『ソルちゃん強い!』


『配信者さんも頑張った!』


『感動した』


 一つ一つのコメントが、温かい。


 視聴者は、俺たちの冒険を本当に楽しんでくれたんだ。


 その事実が、何度確認しても嬉しかった。


「次も、もっと良い配信にしよう」


 ノートを取り出し、反省点と改善点を書き出す。


・カメラの揺れを抑える工夫が必要


・もう少し視聴者への語りかけを増やす


・戦闘前の準備をもっと丁寧に


・ソルとの会話シーンを増やす


・収穫物の説明をもっと詳しく


 書き出していくと、やるべきことが見えてくる。


 完璧な配信なんて、最初からできるわけがない。


 少しずつ、改善していけばいい。


***


 時計を見ると、午後5時を回っていた。


 配信は2時間ほどで終わったけど、その後の放心状態と振り返りで、思ったより時間が経っている。


「お腹空いたな」


 ソルも、同じタイミングで反応した。


「オナカスイタ!」


「よし、夕飯にしよう。今日は特別な日だから、豪華にいくぞ」


 キッチンへ向かい、冷蔵庫を開ける。


 昨日収穫したキュウリとトマト、それに買い置きの肉。


 今日は、俺の得意料理の一つ、野菜炒めと、ステーキを作ろう。


 フライパンを火にかけ、油を引く。


 まずはステーキから。肉に塩コショウを振って、フライパンに乗せる。


 ジュワーっという音と共に、いい香りが漂ってくる。


「ソル、いい匂いだろ?」


「イイニオイ! オイシソウ!」


 ソルが、キッチンの椅子の上で嬉しそうに跳ねている。


 ステーキを焼きながら、今日のことを思い返す。


 初めてのダンジョン探索。


 怖くないと言えば嘘になる。でも、それ以上にワクワクした。


 未知の世界を、ソルと一緒に冒険する。


 その楽しさは、何物にも代えがたい。


 ステーキが焼けたら、次は野菜炒め。


 キュウリ、トマト、ピーマン、玉ねぎを炒める。


 自分で育てた野菜は、やっぱり美味しい。


 料理が完成し、テーブルに並べる。


 ステーキ、野菜炒め、ご飯、そして味噌汁。


 ソルには、小さく切ったステーキと野菜を皿に盛る。


「いただきます!」


「イタダキマス!」


 二人で、夕食を食べ始めた。


***


 ステーキは、柔らかくて肉汁たっぷり。


 野菜炒めは、シャキシャキとした食感が残っていて、ちょうどいい。


「うん、上手く焼けたな」


 自画自賛しながら、もう一口。


 ソルも、嬉しそうに食べている。


「オイシイ! ソウタノ、ゴハン、サイコウ!」


「そうか、気に入ってくれて良かった」


 ソルの喜ぶ姿を見ていると、料理を作った甲斐があったと思う。


 食事をしながら、今後の配信計画を考える。


 次の配信は、明後日。


 その時は、もう少し深く探索してみよう。1階層の全体マップを把握したい。


 そして、できればもっと多くの素材を集めたい。


 素材を売れば、収入になる。配信収益だけでなく、素材販売も重要な収入源だ。


「でも、無理はしないでおこう」


 安全第一。これは絶対に守らなければならない。


 俺が怪我をしたら、ソルも悲しむ。視聴者も心配する。


 そして、何より、配信が続けられなくなる。


「慎重に、でも着実に、進んでいこう」


 ソルに語りかけると、ソルが力強く頷いた。


「ウン! アンゼンダイイチ!」


***


 夕食後、食器を洗っていると、スマホが鳴った。


 メールの通知だ。


 画面を見ると、配信プラットフォームからの通知だった。


「おや...?」


 メールを開く。


『【配信実績レポート】本日の配信について』


 今日の配信の詳細なデータが記載されていた。


・最高同時視聴者数:420人


・平均視聴者数:310人


・総視聴時間:約650時間


・新規登録者数:135人


・スーパーチャット(投げ銭)総額:15,000円


・広告収益(推定):約3,000円


 目を疑った。


「スーパーチャット...15,000円...!?」


 そんなに、投げ銭をもらっていたのか。


 配信中、コメントに集中していて、スーパーチャットにはほとんど気づいていなかった。


 でも、視聴者が、俺の配信にお金を払ってくれたんだ。


 胸が熱くなる。


「ありがとう...本当に、ありがとう...」


 画面に向かって、呟く。


 もちろん、視聴者には聞こえない。


 でも、この感謝の気持ちは、次の配信で必ず伝えよう。


 合計18,000円の収入。


 一日で、これだけの収益。


 もちろん、毎日この額を稼げるわけじゃないだろう。


 でも、配信者として、確かに一歩を踏み出せた証だ。


「ソル、俺たち、すごいことになってきたぞ」


「スゴイコト?」


「ああ、俺たちの配信が、ちゃんとお金になってるんだ」


「オカネ! ソウタ、スゴイ!」


 ソルが嬉しそうに跳ねる。


 この子には、お金の価値はまだ分からないだろう。


 でも、俺が嬉しいことは分かるらしい。


 だから、一緒に喜んでくれる。


 その純粋さが、愛おしかった。


***


 夜、自室でパソコンを開き、配信プラットフォームの管理画面を確認する。


 登録者数:150人。


 まだまだ少ない数字だけど、これが俺のスタートラインだ。


 登録者のコメントを見ていくと、温かいメッセージがたくさん残されていた。


『初配信お疲れ様でした! 次も楽しみにしてます!』


『ソルちゃん可愛すぎます! ずっと応援します!』


『癒される配信でした。仕事で疲れた心が癒されました』


『主さんとソルちゃんの絆が素敵です。これからも頑張ってください』


 一つ一つ、丁寧に読んでいく。


 どのコメントも、温かくて優しい。


 俺の配信が、誰かの役に立っている。


 誰かを癒している。


 その事実が、何よりも嬉しかった。


「みんな、ありがとう」


 小さく呟く。


 次の配信では、もっと良いものを届けたい。


 視聴者の期待に応えたい。


 そのためには、もっと準備をしなければ。


 ノートを開き、次回の配信計画を立て始める。


・1階層の全体マップを作成する


・より多くの素材を収集する


・視聴者とのコミュニケーションを増やす


・ソルとの触れ合いシーンを多めに


・安全管理を徹底する


 一つ一つ、丁寧に書き出していく。


 計画を立てることで、不安が少しずつ解消されていく。


***


 午後10時を過ぎた頃、ふと思い立って、ダンジョンで手に入れた素材を確認することにした。


 ポケットから取り出す。


 小型魔石(F)が4個、ゴブリンの牙が1本、薬草が3束。


 テーブルの上に並べてみる。


 魔石は、淡く青白い光を放っている。


 ゴブリンの牙は、思ったより鋭い。


 薬草は、良い香りがする。


「これ、いくらで売れるんだろう?」


 スマホで、素材の買取価格を調べる。


 ダンジョン省が運営する公式の買取価格表が出てきた。


・小型魔石(F):1個1,000円


・ゴブリンの牙:1本300円


・薬草(F):1束200円


 計算すると...。


 魔石が4,000円、牙が300円、薬草が600円。


 合計4,900円。


「おお、結構な額だな」


 もちろん、初回の記念だから、これらは売らずに取っておこう。


 でも、次回からは、素材を集めて売ることで、安定した収入が得られる。


 配信収益と素材販売。


 この二つを組み合わせれば、生活していけるかもしれない。


「いや、まだ早い。焦るな」


 自分に言い聞かせる。


 まだ始まったばかりだ。


 一回の配信で、人生が変わるわけじゃない。


 地道に、コツコツと続けていくことが大切だ。


 でも、希望は見えてきた。


 この道を進めば、きっと何かが変わる。


 そう信じられるようになった。


***


 午後11時、そろそろ寝る準備をしようと思った時。


 スマホが再び鳴った。


 今度は、着信だ。


 画面を見ると、「弟・颯太」の名前が表示されている。


 弟から...?


 珍しい。弟とは、年に数回しか連絡を取り合わない。


 何かあったのだろうか。


 少し緊張しながら、電話に出る。


「もしもし、颯太?」


『あ、兄さん! 今、大丈夫?』


 弟の声は、いつもより少し興奮しているように聞こえた。


「ああ、大丈夫だけど...どうした?」


『それが...兄さん、配信始めたんだって?』


 心臓が跳ねた。


 もう、バレたのか。


「え...あ、ああ。今日、初配信したんだけど...なんで知ってるんだ?」


『俺、たまたま見つけたんだよ! ダンジョン配信のおすすめに出てきて、サムネイルのスライムが可愛くて見てみたら...兄さんだったから、めちゃくちゃびっくりした!』


 弟が、俺の配信を見ていた。


 そして、俺だと気づいた。


 どうしよう。家族に知られるのは、まだ早いと思っていたのに。


「そ、そうか...見てくれてたのか」


『うん! すごかったよ、兄さん! ソルちゃん可愛いし、ダンジョンも綺麗だし、戦闘もカッコよかったし!』


 弟の興奮した声が、電話越しに響く。


 批判されるかと思っていたのに、褒められている。


 少し、拍子抜けした。


「ありがとう...でも、家族には内緒にしておいてくれないか? まだ、ちゃんと軌道に乗ってないから」


『分かった、内緒にしとく。でも、兄さん、マジですごいよ。俺、ポケモンカード好きだから、兄さんとは趣味合うと思ってたけど、配信まで始めるなんて』


「ああ、そういえば、お前もポケモンカード集めてたな」


『うん! 兄さんのコレクション、いつか見せてほしいな』


「ああ、いつでも見せるぞ」


 弟との会話が、自然と弾んでいく。


 こんな風に、弟と楽しく話すのは、本当に久しぶりだった。


 木村家では、いつも実力や成果を競い合うような雰囲気があった。


 でも、今の弟は、純粋に俺のことを応援してくれている。


 その温かさが、嬉しかった。


***


『それで、兄さん。次の配信、いつ?』


「明後日の午後2時を予定してる」


『了解! 絶対見るから! あ、でも仕事中だから、コメントはできないかも』


「いや、見てくれるだけで十分だ。ありがとう、颯太」


『こちらこそ! 兄さんの新しい挑戦、応援してるよ。頑張ってね』


「ああ、頑張る」


 電話を切った後、しばらく呆然としていた。


 弟が、俺を応援してくれている。


 家族の誰かが、俺の挑戦を認めてくれている。


 その事実が、胸を熱くした。


「ソル、俺...認めてもらえたかもしれない」


 ソルが、嬉しそうに跳ねた。


「ヨカッタネ、ソウタ!」


「ああ、本当に良かった」


 ソルを抱きしめる。


 温かい。優しい。


 この子がいてくれて、本当に良かった。


***


 その夜、ベッドに入ってからも、なかなか眠れなかった。


 でも、昨夜とは違う理由で。


 昨夜は、不安と期待で眠れなかった。


 でも、今夜は、達成感と喜びで眠れない。


 今日、俺は大きな一歩を踏み出した。


 420人の視聴者。150人の登録者。18,000円の収益。


 そして、弟からの応援。


 すべてが、夢のようだった。


 でも、これは現実だ。


 俺は、配信者として歩き始めたんだ。


「明後日も、頑張ろう」


 小さく呟く。


 窓の外には、満月が輝いていた。


 優しい光が、部屋を照らしている。


 ソルは、枕元で安らかに眠っている。


「ぷるぷる...」


 規則正しい寝息。


 その音を聞きながら、俺も少しずつ眠りに落ちていった。


 明日への期待を胸に。


 そして、小さな仲間への感謝を抱きながら。


***


 翌朝、いつもより遅く起きた。


 時計を見ると、午前7時。


 昨夜、興奮でなかなか眠れなかったせいだろう。


 でも、体は軽い。心も軽い。


 昨日の成功が、まだ胸の中で温かく輝いている。


「おはよう、ソル」


 枕元を見ると、ソルはすでに起きていた。


「オハヨウ、ソウタ! キョウモ、イイテンキ!」


 窓の外を見ると、確かにいい天気だ。


 雲一つない青空。


「よし、今日は畑仕事に専念しよう」


 配信も大切だけど、農業も俺の大切な仕事だ。


 バランスを取りながら、両方を大切にしていきたい。


 着替えて、朝食を簡単に済ませる。


 そして、作業着に着替えて、畑へ向かった。


***


 畑に着くと、野菜たちが元気に育っていた。


 トマトは、さらに赤く色づいている。


 キュウリも、収穫時期を迎えていた。


「よし、今日は収穫だな」


 ソルを肩に乗せて、作業を始める。


 一つ一つ、丁寧にキュウリを収穫していく。


 大きく育ったキュウリが、20本ほど採れた。


「豊作だな」


「ホウサク!」


 ソルも嬉しそうに跳ねている。


 次に、トマトの収穫。


 真っ赤に熟したトマトを、優しく摘み取る。


 これも、30個ほど採れた。


「これだけあれば、しばらく食べるのに困らないな」


 収穫した野菜をカゴに入れ、古民家へ運ぶ。


 そして、ふと思いついた。


「そうだ、次の配信で、この野菜を使った料理配信もいいかもしれない」


 農業と配信を組み合わせる。


 自分で育てた野菜を使った料理を、視聴者に見せる。


 それも、俺らしい配信になるんじゃないだろうか。


「ソル、今度、料理配信もやってみようか」


「リョウリ! タノシソウ!」


 ソルも賛成してくれた。


 計画が、どんどん広がっていく。


 ダンジョン配信だけじゃなく、農業配信、料理配信。


 将来的には、ポケモンカードの開封配信もいいかもしれない。


 可能性は、無限大だ。


***


 午後、古民家でゆっくりと過ごした。


 明日は配信がないから、今日は完全オフの日だ。


 リビングのソファに座り、ポケモンカードのコレクションを整理する。


 これも、俺の大切な趣味の一つだ。


 ファイルを開き、一枚一枚、大切にカードを見ていく。


 初代のリザードン、ピカチュウ、フシギバナ。


 どれも、思い出が詰まっている。


「ソル、これが俺のコレクションだ」


 ソルに、カードを見せる。


「キレイ! カード、キラキラ!」


 ソルも、興味津々だ。


「このカードは、10年以上前に手に入れたんだ。大会で優勝した時の記念のカードでな」


 懐かしい思い出が蘇ってくる。


 ポケモンカードの大会。


 あの時は、まだ高校生だった。


 不登校で家に引きこもっていた俺が、唯一外に出るきっかけになったのが、ポケモンカードの大会だった。


 人と直接話すのは苦手だったけど、カードを通してなら、コミュニケーションが取れた。


 そして、優勝した時の喜び。


 家族は誰も褒めてくれなかったけど、それでも、俺は嬉しかった。


「いつか、また大会に出てみたいな」


 小さく呟く。


 配信が軌道に乗ったら、ポケモンカードの大会にも挑戦してみよう。


 そして、その様子も配信できたら、面白いかもしれない。


***


 夕方、畑の様子をもう一度見に行った。


 水やりをして、雑草を少し取って。


 穏やかな作業。


 この時間が、俺は好きだ。


 何も考えず、ただ土と植物と向き合う。


 心が、静かに落ち着いていく。


「ソウタ、ハタケ、スキ?」


 ソルが聞いてきた。


「ああ、大好きだ。ここにいると、心が穏やかになるんだ」


「ソルモ、スキ! ココ、オチツク!」


 ソルも、畑が好きらしい。


 この子と一緒に、畑仕事をする時間。


 これも、俺の大切な日常だ。


 配信で忙しくなっても、この時間は守りたい。


 夕日が、畑を優しく照らしている。


 オレンジ色の光が、野菜の葉を黄金色に染める。


「綺麗だな」


「キレイ!」


 二人で、夕日を眺めた。


 穏やかで、幸せな時間。


 これが、俺の日常だ。


 配信も大切。でも、この日常も大切。


 どちらも、俺の人生の一部だから。


***


 夜、夕食を食べながら、明後日の配信について考える。


 今度は、1階層をもっと詳しく探索しよう。


 そして、できれば2階層への階段を見つけたい。


 でも、無理はしない。


 1階層だけでも、まだ見ていない場所がたくさんあるはずだ。


「焦らず、じっくりと」


 自分に言い聞かせる。


 配信は、これから長く続けていくものだ。


 一回一回を大切に、丁寧に作っていこう。


 食事を終えて、食器を洗う。


 その後、リビングでソルと遊ぶ。


 ソルにボールを投げて、取ってきてもらう遊び。


 ソルは、嬉しそうにボールを追いかける。


「ぴゅい! トッタ!」


「すごいぞ、ソル!」


 笑い声が、古民家に響く。


 幸せだ。


 こんなに幸せでいいんだろうかと思うくらい、幸せだ。


 少し前まで、俺は一人だった。


 誰にも必要とされず、家族からも距離を置かれ、孤独だった。


 でも、今は違う。


 ソルがいる。視聴者がいる。弟が応援してくれている。


 俺は、もう一人じゃない。


***


 就寝前、もう一度配信プラットフォームを確認する。


 登録者数:170人。


 昨日から、さらに20人増えている。


 配信していない日でも、増えているんだ。


 アーカイブを見てくれた人が、登録してくれたのかもしれない。


 嬉しい。本当に嬉しい。


 コメント欄にも、新しいメッセージが届いていた。


『アーカイブ見ました! 次の配信、楽しみにしてます!』


『ソルちゃんに癒されました。ありがとうございます』


『頑張ってください! 応援してます!』


 一つ一つ、丁寧に読んでいく。


 どのコメントも、温かくて優しい。


 この人たちの期待に、応えたい。


 そのために、もっと頑張ろう。


「みんな、ありがとう。明後日、また会おう」


 画面に向かって、呟く。


 そして、パソコンを閉じる。


 ベッドに入り、電気を消す。


 ソルも、枕元にやってきた。


「オヤスミ、ソウタ」


「おやすみ、ソル」


 暗闇の中、天井を見つめる。


 明後日。


 また、ダンジョンに挑む。


 ソルと一緒に。


 そして、視聴者と一緒に。


 楽しみだ。


 不安もあるけど、それ以上に楽しみだ。


 目を閉じる。


 今夜は、すぐに眠れそうだ。


 心が満たされているから。


 幸せだから。


 木村蒼太の新しい人生は、確かに動き始めていた。


 小さな一歩。


 でも、確かな一歩。


 この道を進めば、きっと何かが変わる。


 そう信じて、俺は眠りについた。


 小さな仲間の、穏やかな寝息を聞きながら。


 明後日への期待を抱いて。


 これが、木村蒼太の、配信者としての日常の始まりだった。





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最後まで読んでいただきありがとうございます。


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また、他の作品(・その者、神羅万象の主につき~取り扱いに注意せよ~ ・元天才プログラマー、モンスター育成士になる)も是非読んでみてください。

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