第5話:初配信、緊張の向こうに見えた光

 配信当日の朝は、予想通り早く目が覚めた。


 時計を見ると、午前4時30分。いつもより早い。


 でも、もう眠れそうにない。胸の高鳴りが、睡魔を完全に追い払っていた。


「今日が、本番か...」


 ベッドから起き上がり、窓を開ける。


 まだ薄暗い空。でも、東の空が少しずつ明るくなり始めている。


 深呼吸。新鮮な空気が、肺に満ちていく。


「大丈夫。きっとうまくいく」


 自分に言い聞かせる。


 枕元を見ると、ソルはまだ眠っていた。


「ぷるぷる...」


 安らかな寝息。起こすのが申し訳なくて、そっと部屋を出た。


***


 朝食の準備をしながら、今日の流れを何度も頭の中で確認する。


 午後2時、配信開始。自己紹介、ダンジョンへの移動、1階層の探索。そして午後4時頃に終了。


 シンプルな流れだ。でも、初めてのことだから、何が起きるか分からない。


 トーストを焼き、コーヒーを淹れる。


 いつもはお茶なんだけど、今日はカフェインが欲しかった。気持ちをシャキッとさせないと。


 朝食を食べていると、階段からポンポンという音が聞こえた。


「ぴゅい♪」


 ソルが起きてきた。


「おはよう、ソル。早いな」


「オハヨウ! ソウタ、オキテタ!」


 ソルが嬉しそうに跳ねながら近づいてくる。


「ああ、眠れなくてな。今日は大事な日だから」


「ダイジナヒ! ガンバロウ!」


 ソルの前向きな言葉に、少し気持ちが楽になった。


 ソルにも朝食を用意する。小さく切ったリンゴと、昨日の夕食の残りの野菜。


「イタダキマス!」


 ソルが嬉しそうに食べる姿を見ていると、自然と笑顔になる。


 この子がいれば、きっと大丈夫だ。


***


 朝食後、入念に準備を始めた。


 まず、装備の確認。防具を身につけ、動きやすさをチェックする。


 腕を上げ下げ、屈伸、ジャンプ。問題なく動ける。


 ナイフをベルトに装着。応急処置キットを腰のバッグに。ランタンは手持ちできるように準備。


 次に、配信機材。


 カメラを胸に装着するタイプのマウントに取り付ける。これなら、両手が空く。


 マイクは、襟元に小型のピンマイク。


 照明は、ヘルメットに装着できるタイプ。


 すべてを身につけると、少し重いけど、許容範囲だ。


「ソル、俺の姿、変じゃないか?」


 鏡の前で確認しながら、ソルに聞く。


「カッコイイ! ホントノ、ボウケンシャミタイ!」


「そうか、ありがとう」


 鏡に映る自分は、確かに冒険者らしく見えた。


 少し誇らしい気持ちになる。


 時計を見ると、午前10時。


 配信開始まで、あと4時間。


 長いようで、あっという間に過ぎるだろう。


***


 待ち時間を利用して、もう一度参考書を読み返すことにした。


『ダンジョン探索・初心者ガイド』を開く。


 1階層の基本的な注意事項。


・入口付近は比較的安全だが、油断は禁物


・モンスターは基本的に単体行動が多い


・罠は少ないが、足元には注意


・定期的に入口の位置を確認し、迷子にならないこと


・体力と精神力の管理を怠らないこと


 一つ一つ、頭に叩き込む。


 次に、『モンスター図鑑・完全版』を開く。


 Fランクダンジョンに出現する代表的なモンスター。


・スライム系:攻撃力は低いが、数が多いと厄介


・ゴブリン系:知能が低く、単純な攻撃パターン


・ラット系:素早いが、体力は低い


 でも、俺のダンジョンはEXランク。


 1階層がFランク相当だとしても、通常とは違うモンスターが出るかもしれない。


 油断せず、慎重に行動しよう。


「ソル、危ないと思ったら、すぐに逃げるからな」


「ワカッタ! ニゲル!」


 ソルも、真剣な表情で頷いた。


***


 昼食は、軽めにおにぎりを作った。


 梅干しと鮭のおにぎり。それと、味噌汁。


 ソルにも、小さく切ったおにぎりを与える。


「オイシイ! オニギリ、スキ!」


「そうか、気に入ってくれて良かった」


 食事をしながら、時計を何度も見てしまう。


 午後12時30分。


 あと1時間半。


 緊張で、食べ物がうまく喉を通らない。


 でも、無理にでも食べる。体力をつけておかないと。


 食事を終えて、食器を洗う。


 その後、リビングで配信機材の最終チェック。


 カメラの電源を入れ、映像が正しく映るか確認。


 マイクのテスト。


「テスト、テスト。聞こえていますか?」


 自分の声がクリアに録音されている。問題なし。


 照明も点灯。明るさは十分だ。


 配信ソフトを起動し、設定を確認。


 すべて、完璧。


 あとは、時間を待つだけ。


***


 午後1時45分。


 配信開始15分前。


 リビングに座り、深呼吸を繰り返す。


 心臓が早鐘を打っている。


 手のひらに汗が滲む。


 緊張のピークだ。


「落ち着け、蒼太。お前はできる。ソルもいる」


 自分に言い聞かせる。


 ソルが、俺の膝に乗ってきた。


「ソウタ、ダイジョウブ。ソル、イッショダヨ。ガンバロウ」


 ソルの温かい声が、心に染み込んでくる。


 そうだ。一人じゃない。


 ソルがいる。


 そして、昨日のテスト配信では、70人もの人が見てくれた。


 15人が、チャンネル登録をしてくれた。


 その人たちが、今日も見てくれるかもしれない。


「ありがとう、ソル。お前がいてくれて、本当に良かった」


 ソルを優しく撫でる。


 プルプルとした感触が、心を落ち着かせてくれた。


 時計を見る。


 午後1時58分。


 あと2分。


 深呼吸。


 もう一度、深呼吸。


 そして、午後2時。


 マウスをクリック。


 配信開始のボタンを押した。


***


 画面に「配信開始」の文字が表示された。


 カメラの赤いランプが点灯する。


 配信が、始まった。


 視聴者数:0人。


 でも、すぐに1人、2人と増えていく。


 昨日のテスト配信を見てくれた人たちが、戻ってきてくれたんだ。


「こんにちは! 木村蒼太です!」


 できるだけ明るく、はっきりとした声で挨拶する。


 昨日よりも、ずっと自然に話せている気がする。


「今日は、初めてのダンジョン配信になります。昨日のテスト配信を見てくださった方、ありがとうございます。そして、初めましての方も、よろしくお願いします!」


 視聴者数が10人になった。


 コメントが流れ始める。


『こんにちは!』


『昨日見ました!』


『ソルちゃんは?』


「ソルは、ここにいます!」


 ソルをカメラに映す。


「ぴゅい♪ ミンナ、コンニチハ!」


 ソルが元気よく鳴いた。


『かわいい!』


『ソルちゃんだ!』


『癒される〜』


 視聴者数が20人、30人と増えていく。


 コメントも加速していく。


 嬉しい。本当に嬉しい。


 こんなにも、俺の配信を待っていてくれた人がいるなんて。


「今日は、実際にダンジョンに入って、1階層を探索してみようと思います。初めてなので、慎重に進んでいきますが...楽しみにしていてください!」


『楽しみ!』


『頑張って!』


『安全第一で!』


 温かいコメントが流れてくる。


 視聴者数が50人を超えた。


 昨日のテスト配信の最高視聴者数を、すでに超えている。


「それでは、ダンジョンへ向かいます!」


***


 カメラを胸に装着したまま、納屋へ向かう。


 ソルは、俺の肩に乗っている。


「ぴゅい♪」


 視聴者は、ソルの可愛らしい姿に反応していた。


『肩乗りソルちゃん可愛すぎる』


『ずっと見ていられる』


『この配信、癒される』


 納屋の前に到着。


「それでは、ダンジョンの入口を開けます」


 扉を開ける。


 青白い光の壁が、静かに輝いている。


 カメラが、その神秘的な光景を捉える。


 視聴者数が一気に100人を突破した。


『うわー、やっぱり綺麗』


『こんな入口見たことない』


『これ本当にダンジョン?』


『神秘的すぎる』


「これが、俺のダンジョンの入口です。綺麗でしょう?」


 光の壁に近づく。


 表面に浮かぶ文字が、視界に映る。


『ダンジョン名:無限成長型超越ダンジョン(インフィニティ・トランセンデンス)』


『ランク:EX』


『現在攻略可能階層:1階層』


 でも、この情報は視聴者には見えない。俺だけに見える情報だ。


「それでは...入ります!」


 深呼吸をして、光の壁に手を伸ばす。


 手が、光に触れた瞬間。


 視界が真っ白になった。


***


 次の瞬間、俺は森の中に立っていた。


「うわ...」


 思わず声が漏れる。


 周囲を見回す。


 温暖な気候。優しい木漏れ日。遠くで小鳥のさえずりが聞こえる。


 まるで、別世界だ。


 コメント欄が一気に加速した。


『すごい!』


『本当に別世界だ』


『綺麗すぎる』


『こんなダンジョン見たことない』


『ファンタジーの世界みたい』


 視聴者数が150人を超えた。


「ここが...ダンジョンの1階層です」


 カメラをゆっくりと周囲に向ける。


 緑豊かな森。澄んだ空気。穏やかな風。


「思ったより...平和な場所ですね」


 ソルが、俺の肩の上で嬉しそうに跳ねた。


「ココ、キレイ! ソル、スキ!」


『ソルちゃんも気に入ったみたい』


『癒し空間だね』


『本当にモンスターいるの?』


「えっと、まだモンスターには遭遇していませんが...慎重に進んでいきます」


 前方に、小道のようなものが見える。


 そちらへ向かって、ゆっくりと歩き始めた。


***


 森の中を歩くこと5分。


 今のところ、危険な気配はない。


 小鳥の鳴き声と、風で揺れる葉っぱの音だけが聞こえる。


「本当に、平和な場所ですね」


『モンスターいないのかな』


『安全そうでいいね』


『油断は禁物だよ』


 視聴者のコメントに、頷く。


「はい、油断せずに進みます」


 その時、足元で何かが光った。


「ん...?」


 しゃがみ込んで、確認する。


 小さな、青白く光る石。


「これは...魔石かな?」


 拾い上げて、カメラに映す。


 親指の先ほどの小さな石が、淡く光っている。


『魔石だ!』


『小型魔石(F)だね』


『1,000円くらいかな』


「おお、初めての収穫です!」


 嬉しくなって、魔石をポケットにしまう。


「ソル、俺たち、初めての収入ゲットだぞ」


「ヤッタ! ソウタ、スゴイ!」


 ソルが嬉しそうに跳ねる。


『主従の絆がいいね』


『ほっこりする』


『もっと見つかるといいね』


 コメントも温かい。


 視聴者数が200人を超えていた。


 こんなにも、見てくれている人がいる。


 その事実が、嬉しくて、そして少し緊張する。


 でも、良い緊張だ。


 もっと頑張ろうという気持ちになる。


***


 さらに奥へ進むと、小さな広場のような場所に出た。


 直径10メートルほどの開けた空間。


 中央には、古びた石碑のようなものが立っている。


「おや、何かありますね」


 石碑に近づく。


 表面には、何か文字のようなものが刻まれているけど、読めない。古代文字だろうか。


「えっと、読めませんが...何か重要なものかもしれません」


 カメラで石碑をしっかりと撮影する。


『古代文字っぽい』


『解読できたらすごいね』


『歴史的価値があるかも』


 その時、背後で草むらが揺れた。


「!」


 振り返る。


 草むらから、小さな影が飛び出してきた。


 緑色の肌、小柄な体、鋭い目つき。


 ゴブリンだ!


「うわっ!」


 思わず後ずさる。


 ゴブリンは、木の棒を持って、こちらを睨んでいる。


『ゴブリンだ!』


『戦闘くる?』


『気をつけて!』


 視聴者数が一気に250人に増えた。


 緊張が走る。


 初めての戦闘。


 心臓が激しく鳴っている。


「ソル、気をつけて!」


「ワカッタ!」


 ソルが、俺の肩から降りて、前に出る。


 小さな体で、ゴブリンと対峙するソルの姿が、勇敢に見えた。


***


 ゴブリンが、甲高い声を上げた。


「ギャア!」


 そして、木の棒を振り上げて突進してくる。


 速い!


「ソル!」


 叫んだ瞬間、ソルが動いた。


 ゴブリンの攻撃を、横に跳んで回避。


 そして、すかさず反撃。


 ソルの体が、ゴブリンの足に体当たりした。


「ギャ!?」


 ゴブリンがバランスを崩して転倒する。


「ソル、すごい!」


『つええ!』


『ベビースライムなのに!』


『連携すごい』


 コメントが加速する。


 でも、まだ終わりじゃない。


 ゴブリンが、すぐに立ち上がった。


 今度は、明らかに怒っている。


「ギャアアア!」


 さらに激しく襲いかかってくる。


 ソルが、再び回避しようとするけど、今度は読まれた。


 ゴブリンの棒が、ソルに向かって振り下ろされる。


「危ない!」


 俺は、咄嗟にナイフを抜いた。


 そして、ゴブリンとソルの間に割って入る。


 ナイフでゴブリンの棒を受け止める。


 ガキン!


 金属と木がぶつかる音。


 衝撃が腕に響く。


 思ったより、重い!


「くっ...!」


 でも、踏ん張る。


 ソルを守らなければ。


 ゴブリンと、力比べになる。


 でも、俺の方が体格は上だ。


 力を込めて、押し返す。


「ギャ!?」


 ゴブリンが後退する。


 その隙に、ソルが再び動いた。


「イクヨ、ソウタ!」


 ソルが、ゴブリンの背後に回り込む。


 そして、全力で体当たり。


「ギャアアア!」


 ゴブリンが前のめりに倒れる。


 今だ!


「ソル、トドメを!」


「ウン!」


 ソルが、倒れたゴブリンの上に飛び乗る。


 そして、体重をかけて押さえ込む。


 ゴブリンが、もがくけど、抜け出せない。


 数秒後、ゴブリンの体が光り始めた。


 そして、光の粒子となって消えていった。


 後には、小さな魔石と、ゴブリンの牙が残された。


 戦闘終了。


***


「はぁ...はぁ...」


 息が上がる。


 初めての戦闘。


 緊張と興奮で、体が震えている。


「ソル、大丈夫か!?」


 急いでソルに駆け寄る。


「ダイジョウブ! ソル、ガンバッタ!」


 ソルは、無傷だった。


 良かった...。


 コメント欄が、爆発的に加速していた。


『すごい!』


『初戦闘勝利!』


『連携完璧じゃん』


『ソルちゃん強い!』


『配信者さんも頑張った!』


『感動した』


 視聴者数が、300人を突破していた。


 そして、チャンネル登録の通知が次々と表示される。


 登録者数が、50人を超えた。


「み、皆さん...ありがとうございます...」


 感謝の言葉を伝える。


 胸が熱い。


 こんなにも、応援してくれる人がいる。


 ゴブリンが残した戦利品を拾い上げる。


 小型魔石(F)と、ゴブリンの牙。


「初めての戦利品です!」


 カメラに映す。


『おめでとう!』


『初戦利品だね』


『大事にとっておいたら?』


「はい、記念に取っておきます」


 戦利品をポケットにしまう。


 ソルを抱き上げて、撫でる。


「ソル、お前、すごかったぞ。本当に強いんだな」


「エヘヘ、ソウタノオカゲ! イッショニ、ガンバッタ!」


 ソルの嬉しそうな声が、心に響く。


 この子と一緒なら、どんな困難も乗り越えられる気がした。


***


 戦闘後、少し休憩することにした。


 広場の端にある大きな木の下に座る。


 ソルも、俺の膝の上で休んでいる。


「ふう...初めての戦闘、緊張しましたね」


 視聴者に向かって話しかける。


『お疲れ様』


『初戦闘お見事でした』


『もう少し休んだ方がいいよ』


『無理しないでね』


 優しいコメントが流れてくる。


 視聴者数は、安定して300人前後。


 こんなにも、見てくれている人がいる。


 信じられない。


「皆さん、応援ありがとうございます。おかげで、頑張れます」


 心からの感謝を伝える。


 そして、ふと思った。


 この配信、楽しい。


 視聴者とのやり取り、ソルとの冒険、未知の世界の探索。


 すべてが新鮮で、ワクワクする。


「もう少し探索してから、今日は戻ろうと思います」


『了解』


『安全第一で』


『楽しみにしてる』


 休憩を終えて、立ち上がる。


 ソルを肩に乗せて、再び歩き始めた。


***


 さらに10分ほど探索を続けた。


 その間に、小型魔石をさらに3個発見。


 そして、道端に生えていた薬草も採取した。


「これで、今日の収穫は...魔石が4個、ゴブリンの牙が1本、薬草が3束ですね」


 カメラに向かって、報告する。


『初日にしては上出来だね』


『安全に探索できて良かった』


『次も楽しみ』


 視聴者数は、350人まで増えていた。


 そして、登録者数も100人を突破した。


「皆さん、本当にありがとうございます! チャンネル登録してくださって!」


 感激で、声が震える。


 100人。


 たった100人かもしれない。


 でも、この100人が、俺の配信をまた見たいと思ってくれたんだ。


 その事実が、何よりも嬉しかった。


「それでは、そろそろ入口に戻ります」


 来た道を引き返し始める。


 途中、何度か分岐があったけど、目印をつけておいたおかげで迷わずに戻れた。


 15分後、ダンジョンの入口に到着。


 青白い光の壁が見える。


「無事に戻ってこれました!」


『お疲れ様!』


『初探索成功だね』


『おめでとう!』


 温かいコメントが流れてくる。


 光の壁をくぐり、納屋へ戻る。


 視界が真っ白になり、次の瞬間、見慣れた納屋の中に立っていた。


「ただいま!」


 ソルも、嬉しそうに鳴いた。


「タダイマ!」


***


 納屋を出て、リビングへ戻る。


 カメラを机の上に置いて、正面に座る。


 ソルを膝に乗せる。


「それでは、今日の配信をまとめます」


 視聴者数は、400人を超えていた。


 最高記録だ。


「今日は、初めてダンジョンに入りました。1階層を探索して、ゴブリンと戦闘して、無事に戻ってくることができました」


 戦利品をカメラに映す。


「収穫は、小型魔石4個、ゴブリンの牙1本、薬草3束です」


『お疲れ様でした!』


『初日大成功だね』


『次も楽しみにしてる』


『ソルちゃんお疲れ!』


 コメントが次々と流れる。


「次の配信は...明後日の午後2時を予定しています。また、ソルと一緒にダンジョンを探索しますので、よろしくお願いします!」


『了解!』


『絶対見ます』


『チャンネル登録しました』


 最終的な視聴者数:420人。


 登録者数:150人。


 信じられない数字だった。


「今日は、見てくださって本当にありがとうございました! それでは、また明後日!」


 ソルをカメラに映す。


「ミンナ、アリガトウ! マタネ!」


「ぷるるん♪」


 ソルが元気よく跳ねた。


 その姿を映したまま、配信を終了する。


 画面に「配信終了」の文字が表示された。


 カメラの赤いランプが消える。


 静寂。


 配信が、終わった。


***


 しばらく、呆然と座っていた。


 終わった。


 初めての本格的な配信が、終わった。


 そして、気づいた。


 俺は、泣いていた。


「やった...やったぞ、ソル...」


 声が震える。


「ソウタ...ナイテルノ?」


「ああ...嬉しくて、泣いてるんだ」


 ソルを抱きしめる。


「ソル、俺たち、やったんだ。420人もの人が見てくれて、150人が登録してくれたんだ」


「ヤッタ! ソウタ、スゴイ!」


 ソルも、嬉しそうに跳ねている。


 涙が止まらない。


 でも、それは悲しい涙じゃない。


 嬉しくて、感激して、達成感に満ちた涙。


 こんなに多くの人が、俺の配信を見てくれた。


 応援してくれた。


 温かいコメントをくれた。


 木村家の「落ちこぼれ」だった俺が。


 不登校で、家族に迷惑をかけた俺が。


 今、こうして、誰かに必要とされている。


 その事実が、何よりも嬉しかった。


「ソル、ありがとう。お前がいてくれたから、俺は頑張れた」


「ソウタ、ガンバッタ! ソル、ウレシイ!」


 二人で、喜びを分かち合った。


 これが、俺の新しい人生の始まりだ。


 木村蒼太の、配信者としての道が、今、確かに始まった。





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最後まで読んでいただきありがとうございます。


『面白かった!続きが気になる!今後の展開が気になる!』と思いましたら


☆☆☆から、作品の応援をお願いします。


面白かったら☆三つ、つまらないと思ったら☆ひとつでも大丈夫です!


何卒よろしくお願いします。


また、他の作品(・その者、神羅万象の主につき~取り扱いに注意せよ~ ・元天才プログラマー、モンスター育成士になる)も是非読んでみてください。

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