【第1章 蚊編/第2話】 サナギ覚醒 ― イニシエのチカラ

イニシエのチカラを感じること、約2日。


この静けさ──。

間違いなく、とてつもない……

封印されたチカラが目覚めようとしている……!


ピキピキッ。


パワーーーーッ!


……ってあれ?

サナギって動けんの?


──フュィンッ…


フェニたん:

「あんた、前回とまったく同じこと言ってるわね。

 サナギは動かないって思ってるでしょ?

 それはメディアの偏向報道よ。」


「蝶とかカブトムシにばっかりスポットが当てられてるけど、

 動けるサナギもいるの。

 その小さな蚊の頭に叩き込んでおきなさい♪」


「じゃ、転生パーティ行かなくちゃだから。

 がんばってね! バイバイッ♡」


──フォンッ……


……フェニたん。

おれにも喋らせてほしかった。


それにしても“前回”ってなんだ?

……まぁいい。今は生きることに集中!


それにしても、このイニシエのチカラ……半端ねぇ!


動けないどころか、

プリケツダッシュに磨きがかかったぜ!


これならどんな敵からでも逃げれる!


人間だった頃、おれは⋯全てから逃げてきたんや。

逃げることなら負けないぜ!


──フュィンッ…


フェニたん:

「うわ……とんでもないセリフねそれ。」


──フォンッ……


おれ:

「うるせぇ! さっさとパーティ行ってこんかい!」


さて、オニボウフラ(サナギ)モードになったものの、

休めるどころか……まだ逃げ回らないとあかんのか。


でもこのスピードならいける!


敵データは……特に変化なし……か。


ガタッ。


はっ!?


くねっ──ビューーーーンッ!!


あれ!? こんなところまで移動してる。

しかも逃げようと思った瞬間、すでにケツ振って逃げ切ってた……。


この移動速度と反射神経……想像以上や。

これは使える。


おれは自分の速さに酔いしれていた……。


逃げながらF1の走行音、

「フゥゥゥゥーーーーーーーウンッッ!」とか言ってみたり、


ケツを一回多めに振ってみたり、

とことん逃げた。


あの日のように、何度も、何度も、何度も。


周りでは、数少なくなった仲間たちが

次々と捕食されていく……。


それを横目に、

「ケツのフリが足らんからや」

とか、ちょっと師匠目線で見たりした。


それほど、おれの速さは完璧だった。


いつしかあだ名は──

蚊ールルイス。


そう。自分の速さに酔って酔って……。


あっ。


なんか気持ち悪い……。

おれの中身がリセットされてるような……。


うげぇ……何も食べれん……。


……はうあっ!?


キタキタキタキタキターーーッ!!


せ、背中が……わ……割れる!


ピキピキピキッ!


アイキャンフライッ!!


……。


あれ? 羽が濡れてて飛べない……。

乾かさないと。


よっこいせ……っと。


自分の抜け殻の上に立つって……なんか変な気分やな。

それにしても水面で抜け殻の上に立つとか、不安定でやばい。


プールでビートバンに必死で立とうとしてた頃を思い出すわ。


ってかこの状態、敵来たらやばくね!?


はやくはやく!!


GOGOGOGOGO!!


って特殊部隊かよ!


そんなことより早く乾け!


アメンボが遠くからニヤついてるし、風強いし、魚はパクパクしてるし!


生きた心地しねぇ……!

早く妖精にしてくれ!


やばい! アメンボきた!


もうすぐ乾きそう!

てかどうやって飛ぶんや!?

肩甲骨を動かす感じでいけるのか!?


やばいーーーー!!


……いけたわ。


どうよこの、

大空を舞う妖精のような羽ばたき。


……プーーーン(パタパタ)


さて、次は……。


お?

何やあの軍団は?


続く。

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