マフラー 🧣

上月くるを

マフラー 🧣




あり得ない選択もあり冬青空

干してある靴の左右や冬薔薇


欄干の影を踏みゆく冬帽子

宅配の台車を包む冬日かな


軒先にドライフラワー冬館

毛糸屋のあとに整体冬の靄


枯芙蓉何か言ひたげよその猫

北風や少女の像はかかと上ぐ


降りやまぬ枯葉れんがに燦々と

鳥ごとに水脈を引きゆく冬の川


暖房や野太き声のとびかひて

易々と欺かるるなカーペット


ユトリロの絵に鳥はゐず巴里の冬

マフラーを外さぬ一日くたびれて


連山の裏は港や冬夕焼

急坂に波打つ甍冬の雷


われきらふわれに当てやる懐炉かな

湯気立てて高価なチョコを一つだけ


とつとつと爪弾くギター寒オリオン

坊ちやんの名無しの猫のこたつかな




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

マフラー 🧣 上月くるを @kurutan

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ