第13話 Hさんらしい

 仕事はあまり得意ではありませんでした。

 一言で言えば「不思議さん」です。

 でも悪意はなにもいっさいないのです。

 正直言いますが私も仕事上はいろいろとありました。


 だけど憎めないのです。


 逸話はいくつも出てきます。

 すべてに

「Hさんらしい」

 と誰もが思うでしょう。


 化粧っけはなく、スカート姿を一度も見たことはありません。

 色白で髪はナチュラルのショートでした。


 普段でもおどおどした様子で小さくちょこちょこと歩いていました。


 北海道出身で大学のときに東京に出てきたそうです。

 なにか二次元系が好きでした。

 運転免許は持っておらず

「北海道で運転できないと難しいんじゃないですか…」

 そんなことを話した記憶があります。

 

 一人っ子で数年前にシステム室勤務を最後にお母さまの介護のため会社を辞めて地元に帰られたとのことでした。

 きっとおだやかにお母さまと暮らしていたのでしょう。



 

 ですが、不幸にも病巣が見つかり

 すでに手遅れだったとのことです。

 亡くなられたことを突然知ることになりました。


 その知らせは今でも仲の良い同期会のLINEからでした。


 会社の退職時にはそんなことはなかったようなので、きっと退職以来人間ドックも受けなかっただろうし、だいぶ悪くなるまで我慢されていたのだろう…と知り合いは言っていました。


 怖がりのHさんがその病気を知った時にどうだったんだろう…

 介護の必要なお母さまと二人で聞いたのかな…

 そんなことを同期で話しました。


 お母さまも一人残されてお辛いだろうな…

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