第二章
第8話候補者
5日後。レインとクレアたち冒険者は王都ミネクロバに招集された。
「王都に呼び出しなんて…」
クレアの声には不安が滲んでいた。
「お前らも来てたか」
ガイラが現れる。
「この王都で冒険者登録した奴は全員招集らしい。理由は……誰にもわからん」
いやな予感が胸に残るまま、国王ネイルが姿を見せる。
騎士たちが一斉に膝をつき、空気が重く張り詰める。
「騎士と冒険者よ、よく来てくれた。さっそく本題だ。
……わしは今日をもって国王の座を降りる。
ゆえに、新たな王に名乗りを上げる者たちを紹介する」
会場にざわめきが走る。
冒険者や一般市民が集められる場ではない——それが誰の頭にも浮かんだ。
4人が舞台に並ぶ。
「立候補者1人目、アヴァロン・ビロード」
黒髪の青年が軽く一礼する。
「初めまして。元冒険者のアヴァロンです。
僕が王となった暁には、冒険者と騎士の立場を公平にします」
騎士たちから嘲笑が漏れる。
「冒険者と騎士が対等? 夢物語も大概にしろよ」
レインは、その笑いの中でアヴァロンの表情が微動だにしないことに気づいた。
笑われ慣れている顔—
「立候補者2人目、アシスタ・イルフェウス」
美しい女が優雅に一礼しながら、氷のような瞳で冒険者側を見下ろす。
「私が王妃となれば、過酷な任務は冒険者に任せ、騎士の負担を軽減します」
「ひでぇ言い方だな……」
ガイラが小声で吐き捨てる。
クレアも「性格悪い」と眉をしかめた。
「三人目、ヴァーノルド・ディナー」
巨大な男が口元だけで笑う。
「俺がやるのは単純だ。秩序の破壊と、新しい秩序の創造。以上だ」
会場が一瞬静まり返る。
政治ではなく暴力の宣言。
それでも、誰も止められない圧力があった。
「最後の一人、キャリオ・リルム」
猫耳の少女が手を振りながら朗らかに笑う。
「あたいはキャリオ・リルム! よろしくなっ!」
無邪気な声。けれど、舞台に立つ4人の中で唯一
“場の空気に飲まれていない”
ことをレインは感じ取った。
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