第5話謎の男
――また、あの天井だった。
ベッドの上で、レインは深く息をつく。
「……戻ってきた」
ガイラが椅子に腰かけていた。
「やっと起きたか。お前が倒れたせいで時間かかっちまった。魔の森は気づいたら消えてたぞ」
「あぁ……ありがとう」
自分の声が震えていることに気づく。
ガイラは首をかしげつつ「無理すんなよ」と出ていった。
入れ替わりでクレアが駆けこんでくる。
「レイン! 倒れたって聞いたけど、大丈夫?」
レインは堪えきれず、クレアを抱きしめた。
「よかった……本当に……」
「へっ!? ちょ、ちょっとレイン!? 急にどうしたのよ!」
クレアは耳まで赤くなっている。
生きている――それだけで胸が熱くなる。
「なら、私は村へ新しい魔具の受け取りに行ってくるわね」
「……あぁ。気をつけて」
クレアが出ていく。
今度こそ救わなければならない。
レインはゆっくりと立ち上がる。
「このままじゃ、どう足掻いても勝てない……まずは戦力を増やさないと」
街へ出て、仲間になりそうな者を探す。
焦りすぎて、路地裏から出てきた男とぶつかった。
「うわっ……す、すいません」
「構わん」
落ち着いた低い声。
男は黒いタキシードをまとい、白い仮面をつけていた。
異様に存在感がある。
その場を離れようとしたとき、男が言った。
「ふむ。お前――焦っているな」
「……は?」
「その呼吸。その冷汗。何かに追われている者の匂いがする」
「な、なんなんだよあんたは」
「そうだな。私は義賊だ。名は――ライズ・ネクロズマ」
「義賊……? なら一つ聞きたいことがある。シェパードって義賊を知ってるか?」
ネクロズマは少しだけ目を細めた。
「シェパード、か。聞いたことはある。風の短刀を使う義賊だろう。だが……」
仮面の奥で、口元が笑った気がした。
「私から見れば赤子同然だ」
「嘘だろ……!」
「信じるかどうかは、お前が決めろ。義賊の言葉などな」
この男――ただ者ではない。
レインは覚悟を決めて言った。
「ネクロズマ、頼む。俺に協力してくれ」
「なんの協力だ?」
「シェパードが……俺の大事な幼馴染を襲うんだ」
「根拠は?」
「それは……その……アイツは冒険者を……恨んでるから」
言っていて自分でも弱い理屈だと思った。
だがネクロズマは鼻で笑う。
「まあよい。お前の焦りと震えた声が、嘘ではないのだろう。ならば聞こうじゃないか」
「本当か……!」
「案内するといい。時間がないのだろう?」
「恩に着る!」
レインとネクロズマは、クレアが向かった村へと歩き出した。
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