第4話終わらぬループ
「シェパード! 考え直せ!」
アバスが叫ぶ。「すべての冒険者が、お前たちを見捨てていたわけじゃ――」
言い終える前に、風が裂けた。
シェパードの斬撃がアバスを襲う。
「危ない!」
レインは咄嗟にアバスを突き飛ばし、背中に深い痛みが走った。
「坊主、大丈夫か!?」
「……なんとか」
血が滲む背中を押さえながら立ち上がると、クレアが剣を抜く。
「これ以上は……いくら過去の憎しみがあっても、許さない!」
「その憎しみを抱かせたのは――お前たちだろうが!!」
シェパードが踏み込み、クレアが辛うじて剣で受け止める。
相手の腕力が重い。受け止めるだけで精一杯だ。
クレアは魔力を剣に纏わせた。
青い光が刃を包み、攻守が一段階跳ね上がる。
金属と魔力がぶつかり合い、激しい斬り合いが始まる。
だが――
「見えねぇだろ?」
シェパードの風の斬撃。不可視の一撃がクレアを吹き飛ばした。
「さて――死ね」
振り下ろされる刃。その瞬間――
「させるかああっ!」
レインが飛び込み、《バインド》を放つ。
光の縄がシェパードを絡め取る。
「よっしゃ! 今回は成功……!」
しかし、縄は一瞬で断ち切られた。
「拘束すれば勝てると思ったか? 浅はかだな」
シェパードの風刃がレインの胸を貫いた。
――息が、止まる。
次に目を開けたとき、レインはまたベッドにいた。
「起きたか」
ガイラが椅子にもたれている。「まったく、お前が倒れたせいで時間かかっちまった。魔の森は、気づいたら消えてたさ」
「俺は……どうすれば……」
「なんか困ってんのか? まあ、まずは安静にしてろ」
ガイラが去り、クレアが入ってくる。
「レイン! 倒れたって聞いたけど、大丈夫?」
レインの喉が震えた。
「クレア……俺……どうしたらいいんだ……?」
涙が滲む。クレアは驚いたように目を瞬かせる。
「とりあえず安静にしてて。私はこれから、村へ魔具の受け渡しに行くから」
クレアが出ていく。
レインは拳を握りしめた。
(そうだ。俺が行かなきゃ……バレないんだろ?)
そう考え、今回は“何もしない”ことにした。
だが、翌朝。
「クレアが……見つかった」
冒険者たちのざわめきが、レインの鼓膜を打つ。
駆け寄った先にあったのは――
両腕、両脚を欠損し、目を見開いたまま息絶えているクレアだった。
「なんで……」
膝が崩れ、レインは地面に手をつく。
「なんで……俺は行ってない……何もしてない……! なのに、なんでバレたんだ!? なんでなんでなんで!!!」
頭がおかしくなりそうだった。
(また死ねば……やり直せるのか?)
震える手でダガーを抜く。
迷いは、一秒もなかった。
刃が自分の首へ突き立てられ――
レインは、自ら“死に戻る”道を選んだ。
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