第3話死に戻り

 レインの放った《バインド》がシェパードの足元で光を結ぶ。しかし――

「甘いな」

シェパードは一息で縄を断ち切り、レインへ踏み込んできた。


 鋭い斬撃がレインの喉元に届く寸前、クレアの剣が割り込む。

「させない!」

だがシェパードは軽く跳躍してかわし、口元を歪めた。


「なら――こうだ!」


 次の瞬間、目では追えないほどの連撃がクレアを襲う。

裂ける皮膚。飛び散る血。

「きゃっ――」

クレアがよろめき、全身に深い傷が刻まれていく。


「悪いがな。俺は毎日モンスターを一体狩って腕を磨いてるんだよ」


 そう言ったシェパードの斬撃が、クレアの身体を真っ二つにした。


「クレア!!」

レインは叫び、血の海に崩れた彼女に手を伸ばす。


「レイン……にげて……」

弱々しい声を残し、クレアは息絶えた。


「シェパード……!」

怒りに身を任せたレインは立ち上がるが、

シェパードの一閃が視界を奪い――首が跳ねた。


 ────そして。


目を開けると、そこは自分の部屋のベッドだった。


「起きたか」

ガイラの声が聞こえる。


「お前が倒れたせいで探索が遅れたぞ。魔の森は……気づいたら消えてた」


「な、なんで……俺は死んだ……はず……」


「何を言ってんだ。気絶してただけだろ?」


ガイラが去り、入れ替わるようにクレアが入ってくる。


「レイン! 倒れたって聞いたけど、大丈夫?」


 レインは言葉を失う。

――生きている。

さっき確かに死んだはずの彼女が。


「クレア……お前……本当に無事なのか……?」


「え? 何の話?」


クレアは軽く首を傾げると、「村に新しい魔具を取りに行くね」と言って部屋を出ていく。


 胸騒ぎが全身を駆け抜けた。


「……待ってくれ! ダメだ、変な予感がする!」


 呼び止める声は届かず、クレアは去っていった。

レインは急いで後を追う。


村の魔具店。

中では、クレア、シェパード、店長が談笑していた。


「シェパード……!」

レインは思わず殴りかかる。


「ちょっと! レイン、何してるの!?」


「こいつは……クレアが冒険者だって知って、襲うつもりなんだろ!」


 レインの叫びに、シェパードは一瞬だけ目を見開いた。

図星を刺された反応。


「なるほど……嬢ちゃんたちは冒険者だったわけか。嘘ついてたとはな」


 シェパードは風の短刀を抜き、カウンターを斬り裂く。


その光景は――


(前にも……見た……?)


胸がぞわりと冷える。


「まさか……俺……ループしてる……?」


 レインは小さく呟いた。

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