第3話:哀しみの周波数

帝国の最深部、かつてのオペラハウス。レイは、厳重なバリアに守られた奥の部屋で、冷凍保存されたかのように佇む【旋律姫】を発見する。彼女の顔は完璧な美しさだったが、表情はない。彼女は、マエストロ・デウスの**「歪んだ愛」**、すなわち彼女の苦痛を取り除くための行動によって、永遠の純正律に閉じ込められた姿。


マエストロ・デウス(声): 「哀れなクリエイターよ。貴様が求める声は、この世で最も完全な、『感情なき真実』だ。私は彼女を苦しめるノイズ(感情)を全て削除したのだ。貴様の雑多なノイズでは、彼女は歌えぬ」


警備の弦楽四重奏団が、【ディヴィジの壁】(完璧な和音による強固な防御障壁)を展開する。


レイ(心の声): あの壁は、攻撃じゃ崩せない。俺は彼女を道具としてではなく、一人の自由な歌い手として解放したい!


レイは攻撃を諦め、回復系のスキルを打ち込む。


レイ: 「ボカロ曲・囁き:【ルラバイ・ウィスパー】!」


レイの優しく繊細なメロディと、師から託された**「哀しみの周波数」を持つ囁きボイス**が空間に広がる。その音は、弦楽四重奏団の心に届いた。彼らの顔に一瞬、**帝国では禁じられた、青く凍てついた雫のような感情、「哀しみ」**が浮かぶ。防御の壁にわずかな亀裂が入った。


レイはその隙を見逃さず、【旋律姫】の封印装置にDAWを接続した。そして、彼の心臓を打つビートと、自分の想いを込めた未完成のバラードを流し込む。


レイ: 「頼む、完璧さなんていらない!不完全でいいんだ。君が歌うことを恐れていた、あの時の自由な声で、もう一度、歌ってくれ!」


封印が解除された瞬間、旋律姫の目から一筋の涙が流れ、その身体から、かつて削除されたはずの**「不完全な感情のデータ」**が解き放たれ、レイのDAWに流れ込んだ。

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