解放暦時代についての記述
鄙見
プロローグ
世界政府樹立宣言・抜粋
人類の歴史は、長きに渡る飢えと戦争の歴史であり、平和を得てからは搾取と格差の歴史であった。
我々は三度戦争の惨禍を経験し、それを痛感した。我々は、この苦痛から解放されなければならない。
この荒廃し瓦礫に埋もれた世界から、この世のすべての人の幸福のために立ち上がるのだ。
我々は宣言する。格差なき社会を。搾取なき生き方を。戦争なき世界を。
不平等は不必要な不和をもたらす。それはひいては、この社会を揺るがす重大な綻びとなる。その所以も、結果も、我々は充分すぎるほどに理解したはずだ。故に、我々は争いを生み出した源を断ち切る必要がある。我々の愚かさは、我々自身が今を以て捨て去られる。我々はその意志を表明する。
人は生まれながらにして平等である。今度こそ、その意味を正しく理解し、実践しなければならない。
生まれによってその境遇に差が生じることも、その差が永遠の連鎖となることも、あってはならないことである。
我々の叡智は、労力は、富は、そのすべてがあらゆる人々に開かれ、等しく分かたれなければならない。
我々は永遠の安全を保証する。すべての人の幸福を約束する。幸福は単なる感覚ではなく、我々が提供する制度によって確かに守られるべきものである。
我々の目標とすべきは安寧である。飢える心配のない明日であり、不安を抱く必要のない幸福な今日である。より多くを渇愛する必要のない世こそが、我々が作り出すべき理想である。
よって、我々は必要最低限の生活をすべての人に保証する。あらゆる人のためのパンと、すべての人のための屋根を我々は誂える。そうして生まれた平穏のうちに、人々は安らぎを得ることになるだろう。
このような理念を抱える我々世界政府は、多大なる善意と正義に基づいて行動する。我々は世界の支配者ではなく、人々の平和の守護者である。
我々は人々の明日を、彼らの代わりに保証する必要がある。そのためにこの世界のすべてを管理する。ときには人々の考えを正す必要があるかもしれない。いかなる場合であっても、人々の幸福を真に実現させるため、我々は身命を賭して人々のために奔走する。我らの神が我々に永遠の平穏を約束することはついぞなかった。故にそれは我々自身の手によって果たされる必要がある。存在が不確かな神ではなく、我々自身の手によって。
私はこの宣言によって、今こそ世界の平和と繁栄を永遠に保つことを誓う。
解放暦元年
世界政府中央評議会 代表 ウォーレン・F・カーター
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます