一分半〜三分程度

〈変人達の遊園地デート〉三分程度 ●女 ◇男 ★ナンパ男

●「ねえ、そろそろ恋人になってよ。他に好きな人いないんでしょ?」

◇「うーん、君とは友達でいたいな。それじゃだめ?」

●「……納得したくないです」

◇「そっかぁ。ま、僕に勝手に手出さないから君はいい子だよね。そういうとこ好きだよ」

●「す、好きって軽率に言うな!」

◇「あ、ごめん。でも好きなんだもん。あ、友達として。というか、君も諦め悪いよね。多分僕じゃなかったら百回も告白される前に逃げ出してるよ。この遊園地も二十回目だし」

●「知ってる。そういうところも好き。何回もデート来てくれるとこも好き」

◇「参っちゃうなぁ。重くて。気持ち的にも物理的にも。僕って背もたれとかじゃないんだけど。もうコーヒーカップで酔ってたの治ったよね?」

●「うん」

◇「それは良かった。けど、僕さっきから漏れそうなんだ。流石にトイレは行かせてほしいな」

●「それは行ってきていいよ」

◇「じゃ行ってきまーす」

●「行ってらっしゃい。……あぁー! 今日もかっこいい! 顔面最強、好き。声好き。優しくてかっこいいの好きー!」

★「あ、ねえねえそこの君、今ヒマ? ヒマならこれから俺と一緒にお茶でもどうかな? ここの遊園地、料理もおいしいんだよ」

●「え? ……いや、ちょっと……連れを待ってるので」

★「えー? じゃ電話番号交換しようよー」

●「え、電話番号? いや……携帯持ってないんで」

★「えー持ってないの? 今時ガラケーぐらいみんな持ってるよ。ほんとに持ってないの?」

●(いつの時代の男だ? こいつ。世はスマホぞ?)

 (間)

◇「ど、どうしよう! トイレどこか分かんない! 漏れそう! そうだ、ちょっと戻って聞いてこよう!」

 (間)

●「ねーねー、いーじゃーん。お茶しようよ〜。お茶が嫌なら観覧車でもお化け屋敷でもいいからさー?」

ぼ「あ、あれは……ナンパ⁉︎」

●「いや、ちょっと無理……ッスね」

★「そんなこと言わないでさー。俺とお茶しよーよー。ねーねー」

●「いやほんと……無理なんで。そろそろどっか行ってもらえませんかね……?」

★「えー、冷たいなー」

◇「そこのお前! 僕の大切な友人に何し――」

●「さっきからうっさいんだよお前は! 人が優しく言ってるからって調子に乗りやがって! さっさとどっか行けよ! タマぁ握り潰すぞゴルァ!」

★「ヒッ……! す、すみませんでしたー‼︎」

●「フーッ、フーッ。……あ、あ、あれ? 戻ってきてたの?」

◇「うん。……あの、こわいね。……つよいね。僕が出る幕なかったじゃん。守ろうかと思ったのに」

●「えっ⁉︎ 助けてくれようとしてたの?」

◇「一応」

●「や、やっぱり好きって思ってくれてるんだ!」

◇「そうだね、でもやっぱり意味が違うと思うよ」

●「そんなっ」

◇「でもさ、君が危険に晒されてたら、守ってあげるのが友達ってもんでしょ」

●「カッコいいこと言ってくれるじゃん! 大好き!」

◇「ふふっまあね。でも……漏らしちゃった!」

●「ウソでしょー⁉︎」

◇「ふふっ、ごめんね」

●「ああぁっ、せっかくのデートがぁっ。でもやっぱりそんなとこも好きぃ‼︎」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る