一分半〜三分程度

〈一人が寂しくて少年を攫ってしまった神様と、意外と満喫してる少年〉二分程度 ●少年(中学生程度) ◇神(中学生程度)

●「やしろ、見て! できた」

◇「……綺麗な鈴」

●「そうでしょ? 頑張って作ったんだ」

◇「……楽しそうだね」

●「楽しいよ。ここの空気は落ち着くし」

◇「……あのね、一応言っとくけど僕はここの神様で、君は人質みたいなもんなんだからね?」

●「うん、知ってる」

◇「このままここにいたら、いずれ死ぬんだからな?」

●「うん、知ってる。死んだら君とお祭りで屋台を見て回りたいなぁ」

◇「はぁ……。神隠しに遭っておいて泣き出しもせずに。君は本当に元気な人質だよ」

●「ありがとう。でも僕が元気なのは君が優しいからだよね。こんなボロボロのお社にひとりぼっちでいたんだし、腹いせに僕のこと殺しててもおかしくないと思う。……ねえねえ、僕のこと殺してないのって僕が可愛いから? それとも神様のプライドってやつ?」

◇「……僕は君を殺したい程憎悪に満ちてるわけじゃないよ。殺してすっきりするとか、見せしめにしたいとかでもない。ただ、独りが寂しいだけの老人だ」

●「じゃあさ、ここで仮に悪霊になってやるとか言ったら僕を帰してくれるの? やしろ、僕のこと殺しはしないけど絶対に帰してくれないからさ」

◇「傲慢で悪いね。でも、なつきは悪霊にはならないよ。どっちかと言ったら僕の方が悪霊だ。君を攫って、結果的に殺すわけだし」

●「……じゃあ二人して悪霊になれば誰かが祓いに来るんじゃない? そしたらこの場所からも解放されるよ。ここで忘れ去られるのを待つより手っ取り早い気がするけど」

◇「……君を悪霊にはしたくないんだよ」

●「……優しいね。じゃあ、待つか〜。ここに神様がいたことを誰も思い出せなくなって、君がただのやしろになるまで。……あ、お祈りでもしとく?」

◇「っははは、そうするか?」



〈師弟のような相棒のような〉一分半程度 ●青年 ◇女(青年より年上)

●「なあ、なんで僕なんだよ」

◇「まだそんなこと言うつもりか?」

●「だって……。僕は僕すら認められないのに」

◇「そりゃあ、お前の本質を知ってるからさ。今ぐしゃぐしゃで泣いてるその向こうには、強くて優しい、綺麗な楽園がある。それを知ってる」

●「あんたは、今の僕は嫌い?」

◇「嫌いとかそういう問題じゃないけどなぁ。今そういう状態だってだけなんだから。でも、そうだなあ……泣いてる顔は好きか嫌いかで言うと嫌いだね。あたしはお前に笑顔でいてほしい。お前のこと好きだからな」

●「……そっか」

◇「ああ。……でもお前、自分でも気付いてるんじゃないか? 変わり始めていることに」

●「……それは、確かに、思ってる。でも不安なんだ。上手く出来るかとか」

◇「誰かの為にやるんじゃない。お前はお前の為に生きればいいんだよ。期待に応えよう、なんてするもんじゃない。自分を見てやればいい」

●「……うん。……きっと、上手くいくよね? 大丈夫だよね」

◇「お前がそれを信じさえすれば、何だって出来るさ」



〈これからも楽しい旅続けようぜ!〉一分半程度 ●◇十五か十六歳程度の少年

●「ねえ、なんでおれなの。おれでよかったの?」

◇「事あるごとにその話するよな、おまえは。どうした、何がそんなに不安なんだ?」

●「……おまえは、おれでいいのかなって。おれはおまえのこと好きだけど、おまえは――」

◇「ばか。何言ってんだよ、あほんだら。好きじゃなきゃ、一緒に旅なんかしねーつってんだろ。いい加減分かれ」

●「だ、だけど! いつかあんたに置いてかれやしないか不安なんだよ!」

◇「俺がおまえを、置いてく? ……はっ、そんなことするやつは俺じゃねえよ。いいか? 俺とおまえは一心同体。情けなくも俺はおまえがいねえとダメだ。つまんねえし生きてけねえ。分かったら変なこと言うんじゃねえよ、いいな?」

●「……分かった。……でも、そうだね。確かにおまえはおれがいないと、一人で家に帰ることもできないもんな。おまえがおれを置いていったら確かに偽物だ」

◇「その通り。……なあ、おまえ、実はこの間のこと根に持ってたりしないよな? 俺が迷子になって夜中まで行方不明だったの」

●「まさか! 流石に心配したけど」

◇「あ、ならいいんだ。実は俺も結構迷惑かけてるからさ」

●「……おれは別にいいけどね。迷惑じゃないし。……結局助け合い。仲間ってそういうことなのかもね」

◇「おまえ……。っやっぱり好き! これからも助け合って生きていこうな!」

●「うわっ崖っぷちで抱きつくな、こわい! 落ちる!」



〈勘違いで起こった悲劇〉一分半程度 ●妖魔(女) ◇男

●「あいつはお前らに殺されたんだ! 見捨てやがって人でなし!」

◇「彼は自ら殿しんがりに名乗り出た。……こんなことを君に言うのは酷だと分かってはいるが……彼は大病を患っていた。もう治せない程の。だから『俺でいい』と」

●「っう、嘘だ! あたしに言わなかった。病は治せる筈だ。それにあいつは、みんなに置いてかれて、一人で妖魔に立ち向かっていって死んだんだ! お前らが見捨てたんだ! お前らが……あいつを妖魔に差し出したんだ。あいつが病になんてなる筈ない。呪いだ! 誰かに呪いを掛けられたんだ!」

◇「……呪い、か。……確かに、あれは呪いだったかもしれない。彼はとても責任感の強い人だった。かつて犯した間違いを、ああして償おうともしたんだろう。彼は命を落としたけれど、私達みんなを守ってくれたんだ」

●「……嘘だ。嘘だ。じゃあ、じゃああたしは……あいつが助けた命を奪ったっていうのか? あたしが……。じゃあ、あたしは、誰の為にお前らを殺したんだ。一体、何の為に……」

◇「……」

●「なあ、今から謝ったら遅いのか? ……いや、そんなことは分かってる。罪は消えない。……あたしのことは祓ってくれ。もう終わりにする。……命を奪ってすまなかった」

◇「……止まってくれてありがとう。君も、来世では幸多からんことを」



〈この二人組だといつもダンジョン攻略が上手くいかない〉一分半程度 ●◇男

●「おいバカ。もうちょっとあっち行けよ!」

◇「うっせ、それはお前もだろ!」

●「近いんだよバカ!」

◇「お前こそ! 何でこの宝箱の中来たんだ。どっか違うとこ行けばよかっただろ」

●「うるせーな、これしか入るとこ見つからなかったんだよ」

◇「おい静かにしろっ。モンスター来たぞ」

●「っ!」

 (間)

●「……行ったか?」

◇「はぁ、お前な〜、変なトラップ踏むなよホント」

●「お前が話しかけてくるから気付かなかったんだよ」

◇「あぁ、もういいよ出るぞ」

●「あ〜最悪だ。二度と同じ宝箱に入りたくない」

◇「お前が入ってきたんだろ⁉︎ ……ん? お、おい、またなんかモンスター来てるぞ! 走れ!」

●「あぁもう何でだよ! 何でお前と二人でダンジョンに来ると、こんなにモンスターに襲われるんだ!」

◇「知らねえよ! お前がいつも以上にドジ踏むからじゃねえの?」

●「お前がうるさいんだよ」

◇「あぁ? っうわ、そんなこと言ってる場合かよ、前行き止まりだぞ!」

●「くっそ、掴まれ。飛ぶぞ!」

 (間)

◇「……はぁ〜。もうこりごりだ。薬草も取ったし、宝物もある程度取った。今日はもう帰らないか?」

●「賛成だ。もうこれ以上走り回りたくない」



〈少女が竜にする恋愛相談〉二分程度 ●少女(十五歳程度) ◇竜(ご自由に)

●「竜さん、わたしどうしたらいいの……?」

◇「悩み事かい?」

●「うん。……好きな人がいるんだ。だけど気づいてくれなくて。どうしたらいいかな?」

◇「気づいてくれないというのは『君』にかい? それとも君の『好き』にかい?」

●「わたしの……気持ちに。……はぐらかされてるみたいで、むず痒くって」

◇「そうかい。それはきっと、その人は怖いのだろうね」

●「怖い? 何が怖いの?」

◇「自分の気持ちを自覚するのがだよ。それに、君が本当に自分を好きか、確信が持てないんだろう」

●「わたしは本当に、その……心の底から好きだよ。大好き」

◇「ああ、そのようだね。君は真摯に『好き』を伝えるといい。きっと気づいてくれるさ」

●「分かった、そうしてみる。ありがとう、竜さん。……でも、一つ気になることがあるの。どうしてあの人が抱いている気持ちが恐怖だって分かったの?」

◇「ワタシにも、そんなことがあったからだよ」

●「竜さんに?」

◇「随分昔のことだけどね」

●「それ、教えてって言ったら困る?」

◇「うーん、少し困るな。それに君にはまだ早いよ」

●「早い? ……そんなに難しい内容なの?」

◇「難しいよ。少なくとも、今の君に話せるような内容じゃない。もう少し大人になったら話してあげてもいいけどね」

●「……そっかぁ。分かった。じゃあまたね、竜さん。ありがとう」

◇「ああ、行っておいで」

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