異世界
「なにを隠そう、おれは『とーめーにんげん』だからな」
「よし、準備はばんたんだ。行こう! 新しいぼうけんへ!」
「いい朝だ。旅立ちの日にぴったりの晴天。さあ、次はどこへ行こうか」
「バカやろー、心配したんだぞ! 急にいなくならないでよ……」
「めいわくかけてしまって、すまない。でも、おかげで助かった。かんしゃ、かんしゃなのだ」
「ふっふっふ、ではここらで最高の魔法というものを見せてあげよう。いいかい、生徒の諸君。魔法とはこのようにして使うのだよ」
「今日も、生きて朝日を拝む事ができた。君のおかげだよ、感謝する」
「君に出会えて良かったよ。君のおかげで、僕は色んな世界を知ることができた。今まで楽しかった、ありがとう。……ってまだ、ずーっと君の隣にいる予定だけどね。これからもよろしく」
「いったいどこまで行けるのかな。……どこまででも、君となら行ける気がするよ。なんでだろうね? ……なんて。出逢ってくれて、ありがとう」
「冒険のタネなんて、そこら中にあるよ。気がついてないだけなんだ。だからさ、ほら、ちょっとでもいいから気にしてみてよ。そうすれば、もっと毎日が楽しくなるよ」
「君が今生きてるのは、君が――君の魂が、まだやりたいことがあるからだよ」
「僕の思考の中は、宇宙そのものだ」
「君は彼に似ている。彼女もつい、思い出してしまったんだろう。彼の生前、よく喧嘩をしながらも相棒として頑張っていたから。ただ最後は大喧嘩をして、彼は去っていった先で戦死した。君に同じようになってほしくないんだろう。それは私も同じだけれど……とにかく、大丈夫? 怪我をしていたらあっちのテントに行くといい」
「ねえ兄さん、あの日のこと覚えてる? 青の洞窟の中……僕らがまだ何者でもなかった時のこと。こうやって思い出してみると、懐かしいね。今ではそれが夢みたいだよ」
「何かに記すと言うけれど、その本質はどれも同じなんだよ。文字、水晶の映像、そして記憶。……私達は普段何気なく言葉を交わしている。日々を生きる上で伝えた言葉を忘れることもあるけれど、誰かにとってそれは消えない印になることがある。恥ずかしいけれど、最近気付いたことだよ。長年この仕事をやっていて、たくさんの情報に触れたけど、忘れられないことってあるものだね」
「どうやら君は好奇心が旺盛なようだから、特別に聞かせてあげよう。こんな話を知ってるかい?」
「兄ちゃんなぁ、自分の実力ぐらい分かっとけぃや。んなんじゃあモンスター倒したとて道連れじゃいーや。ええか? ちゃんと家に帰るんが旅に出たもんの責務じゃ」
今日もいい朝だ。小鳥はさえずり、樹々の間からは木漏れ日が差し込んでいる。
「おはよう、僕の愛する仲間達」
高い耳鳴り。氷の洞窟は青白く静か。張り詰めた空気が私を包む。
「分かるわ。そこにいるのね」
白い息を吐いて現れたドラゴン。見た目にそぐわない温かいエネルギーを宿している。強くて優しいひと……。私はそっと近付いて、硬い鱗に手を触れた。
幼い頃に選ばなかった方の選択肢をふと見てみたくなる時がある。あの時、ああしていたらどうなっていたのだろうか、何か変わっていたのだろうか、と。
地面からも降っているのではないかと思うほどその雨は強く、木を洗い、家々の窓に強く打ち付け、少しでも隙間が開いていようものならものの三秒もかからず水溜まりを作った。
雷鳴が轟き、細い線であるのに強すぎるそれは、全てを荒く洗い流していく。
今から始めるのは、それよりずっと過酷だった、とある世界のお話だ。
一人で生まれ、一人で死んだ。その少女の名前を誰も知らない。ただ森だけが彼女を受け入れ、やがて少女は精霊となった。
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