第3話 ジョージ・マロリー
めぐみというおねーさまは、最近入ったひとで酒焼けした声と目の下のクマ、場慣れした雰囲気で、何年もホステスやってきたんだろうなと思うような人だ。ただしゃべっても一言多いし、上から目線の物言いが多いので、はっきり言うと苦手なタイプ。
その雰囲気を出してるはずなのに、たぶん他の客も知らないからか、よくオレの前にやってくる。仕事だと思ってるのか、頻繁に話しかけてくるので、人見知りなので、こないでほしいという念を割と本気で送ってみる。
めぐみを適当にあしらいながら、ちょいちょいスキをみて顔を出してくれた、ゆうきちゃんから聞いた話だと、この今日の混雑はゆうきちゃんの知り合いが、たくさん来ていて混んでいるとのことだった。
奥の小さいボックス席にいる男女4人組が、ゆうきちゃんと同じ職場の同僚の人。カウンターの二つ隣にいる1人で来ているちょっとぽっちゃりした男が、同じ会社だけど違う部署で、会社では話をしたことないけど、どっかでゆうきちゃんがここで働いていることがバレちゃって、最近よくひとりできているとのこと。さらにカウンターの端のほうにいる男女カップルは、ゆうきちゃんの高校の同級生で、二人は今度、結婚するとのこと。
ゆうきちゃんの話すニュアンスでぽっちゃり男には、あまりいい印象はないのだなと察する。カウンター端の同級生二人の結婚式で、ゆうきちゃんは挨拶をするそうで、俺も同僚の結婚式で、挨拶したことを思い出し、その同僚と2人で登山をしていたころの思い出やジョージ・マロリーの話なんかをしてしまい、妻や親族に隠していた登山趣味をバラして、怒られた。若かったなと一人で赤面した。
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