同居人が美少女すぎて、平穏な日常が崩壊寸前です。
XenO
第1話 インターホンが鳴る音は、だいたい平穏を壊す
四月。
春。
新生活の季節。
――正直、俺には関係ないと思っていた。
俺の名前は
本日から高校一年生。
そして、本日から一人暮らし。
県外へと仕事で飛んでいった両親に代わり、俺はこの小さなマンションの一室で生活することになった。
間取りワンルーム、家賃そこそこ、家具家電付き。
人との距離感も人生設計も、全部最低限でいい。
「……静かでちょうどいい」
ダンボールの山を横目に、床に座りながらコンビニのおにぎりをかじる。
テレビもつけていない部屋は、やけに音がよく響いた。
玄関の時計を見る。午前十時。
――完璧だ。
誰にも邪魔されない、俺だけの空間。
そのときだった。
♪ ピンポーン
「……は?」
思わず声が漏れた。
引っ越し業者はすでに帰っている。
近所付き合いをする予定もない。
宅配便なら不在票でいい。
再び鳴る。
♪ ピンポーン
「……無視でいいだろ」
そう思ったのに、なぜか体が動いた。
ドアの前に立ち、チェーンをかけたまま扉を少し開ける。
「――どちらさまですか?」
ドア越しに見えたのは――。
白い髪。
春の陽射しを反射して、やけにきれいだった。
「……あの……如月くん、ですよね?」
透き通るような声。
日本人離れした整った顔立ち。
――綺麗、という言葉が先に浮かぶ。
「……そうですけど」
「私、氷室エリナっていいます」
名前と一緒に、ぺこりと頭を下げる。
その仕草がやけに丁寧で、なのに場違いだった。
「今日から……ここに住むことになりました」
「…………は?」
脳が言葉を拒否した。
「え、えっと……間違ってませんか? ここ、俺の部屋なんですけど」
「はい。知ってます」
即答。
「私の両親と、あなたのご両親が……話をして」
「ご両親……?」
嫌な予感が背中をなぞった。
「“いい機会だから一緒に住ませよう”って……」
ゆっくりと、エリナは小さく息を吸う。
そして。
「だから、今日から――同居です」
――沈黙。
「……ちょっと待ってください」
頭が追いつかない。
両親がいないとは聞いていた。
だが“他人と暮らせ”とは、一言も――。
「……あの……」
エリナは、少し困ったように視線を落とす。
「……嫌なら、無理にとは言いません。でも……」
手に持っていた小さなボストンバッグを、ぎゅっと握る。
「……私、帰る場所……ないので」
……ずるい。
そんな言い方、反則だろ。
しばらく、無言で見つめ合って。
俺は、ため息をついた。
「……とりあえず、話、聞きますから」
チェーンを外す。
ドアを、開けた。
「上がって……ください」
一瞬、エリナの目が少しだけ大きくなった。
「……お邪魔します」
その声は、どこかほっとしていて。
こうして――
俺の静かすぎた一人暮らしは、たぶん終わった。
たぶんじゃない。
間違いなく。
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