閑話 クレインの場合〈前編〉
リプレイ小説ではありませんが、クレイン・みるふぃーちゃん・アーシェラの経歴紹介的な閑話をお送りいたします。
その次に、2つめのシナリオ「貧民街の闇」のリプレイ小説となります。
前話と違ってお気楽な雰囲気でお届けする予定ですので、よろしくお願いします!
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「私は世界中のもふもふを手に入れるのよ!」
そう言って、僕の姉さんは成人と同時に生まれ育った村を飛び出して行った。
意味不明だ。理解不能だ。
確かに姉さんはやたらと「もふもふ」ってものに固執していて、村の中でも変わり者と思われていた。
でもまさか、いきなり飛び出していくなんて思ってなくて、ちょっと……いやかなりショックだった。
だって僕にも何も相談してくれなかったんだもん。
姉さんは15歳の誕生日の朝、大きな布包を背負って部屋から出てくるなり、さっきのセリフだけを言い放って出て行ったんだ。
初めは僕も、父さんも母さんもすぐに戻ってくると思ってた。
どうせこれも「奇行」の一種だろうって。
だけど予想に反して、1日経っても3日経っても1週間経っても姉さんは戻って来なかったし、なんの便りもなかった。
僕は姉さんを探しに行きたいって言ったけど、成人するまでは村を出てはダメだって言われてしまった。
そんな時、年に1回だけ村にやってくる人間の行商人が来たんだ。
僕たちが育ったのはウルシラ地方の森の奥にあるエルフの村で、こんなところを訪れる人はほとんどいないし村人も外に出たがらないようなところだ。
だけど、この行商人だけは僕が生まれるより前から村に出入りしていて、どうしても村では自給自足できない物品を売りにやってくるんだ。
姉さんはこの行商人と仲が良くて、村の外の話をたくさん聞いていたみたいだった。
だから僕は姉さんのことを相談してみたんだ。
そしたら行商人は少し逡巡した後に、こっそり教えてくれたんだ。姉さんの消息を。
この行商人はランドール地方のハルシカ協商国で偶然姉さんに会ったそうだ。
姉さんは女性の冒険者パーティと一緒にいて、その人たちと一緒にハーヴェス王国に向かっている途中だと言っていたそうだ。
ハーヴェス王国……。
海の近くのとても栄えている国であるってことは知ってる。だけど村からはあまりにも遠くて、そんなところに姉さんがいるなんて全く想像ができない。
姉さんは本当に帰ってくるつもりがないんだろうか……。
僕は成人と同時に姉さんを追いかけることに決めた。
父さんと母さんはすごく反対してたけど、僕は断固として聞かなかった。
できれば姉さんに戻ってきてほしいし、それが叶わないならせめてどうしてるのかだけでも直接会って聞きたい。
最終的に父さんと母さんが折れて、僕はハーヴェス王国に向かえることになった。定期的に便りを出すことだけは約束させられたけどね。
村に来ていた行商人が紹介状を書いてくれたおかげで、僕はハーヴェス王国に向かう隊商に入れてもらうことができて、そこで下働きを手伝いながらハーヴェスに無事に辿り着けた。
生まれて初めて見る海は広くて、不思議な匂いがして、ちょっと怖いと思った。だってあんなたくさんの水が溢れてきたらどうしようって思うじゃないか。僕も街もひとたまりもないよ。
それなのに、船に乗って海を渡っていく人がたくさんいるなんて、僕には信じられない。
ハーヴェスの街もとても大きくて、人も店も多くて祭りなのかと思うぐらい賑わっていて、しばらくは興奮でなかなか寝付けなかった。僕が育った世界がいかに小さい物であったのか思い知ったよ。
姉さんは冒険者パーティと一緒だったって話だったから、いくつもある冒険者ギルドの周りをうろついてみていた。他に手がかりはないからね。
そうしたら、ついに見つけたんだ。姉さんを。
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