21.レベルアップ
――――――――――
【クエストクリア】
スケルトンをたくさん倒した
地の底で眠りし者・ベヒモスを倒した
【チート・クラフト】がレベル23になりました
――――――――――
――――――――――
【チート・クラフト】:レベル23
・SLG『文明の箱庭』レベル19
・RPG『マルクト戦記』レベル18
・LIFE『■■■■■の世界』レベル15
ワールドスキルが追加されます
【新たなワールドがアンロックされました】
・???
ワールドスキルが追加されます
――――――――――
【メテオレイン】が完全に止むと、【チート・クラフト】はレベル23に、SLG『文明の箱庭』はレベル19に、RPG『マルクト戦記』はレベル18に、LIFE『■■■■■の世界』はレベル15に上がっていた。
世界そのものを自在に改変しかけたLIFE『■■■■■の世界』は選択できない。
神専用のスキルなのだろう。むしろ使えなくてほっとした。
そういえば、LIFE『■■■■■の世界』には他のワールドのようにコマンドがなかった。
神は直接手で何かを打ち込んで操作していたのだ。
おそらく使用には何らかの知識が必要になるのだろう。
俺には扱い切れなそうだとオズワルドは考える。
それはそれとして、SLG『文明の箱庭』やRPG『マルクト戦記』も十分危険である。
【チート・クラフト】レベル4の時点で大規模な災害を起こせるほどだったのに、レベル23になったらどうなってしまうのか。
オズワルドは一瞬【チート・クラフト】を封印しようか迷ったが、魔王や混沌竜、機械巨兵や海王の方がずっとやばかったし、今後似たようなやつらが出てこないとも限らない。
特に戦う予定はないが、このスキルは調べ尽くしておいた方がいい。
それに。
確かに危険なスキルではあるが、強いかと言われると…オズワルドの基準では別に強くはなかった。
この程度では、かつて共に戦った英雄達の足元にも及ばないだろう。
「俺もまだまだだな…」
オズワルドの言葉に、未だ世界を知らないルシアンがぎょっとする。
まだ上があるのか? という顔だった。
あるのだ。
「みんな、聞いてくれ! さっきの攻撃について話がある!」
オズワルドがそう招集すると、傭兵達が集まってくる。
物陰に隠れていたレティもおそるおそる顔を出した。
オズワルドは深刻そうな面持ちでこう言った。
「おそらくこれはグレイフォードからの攻撃だ」
大嘘である。
しかし真偽がわからない傭兵たちは一同騒然となった。
「そんな…あれが攻撃? 人間にあんなことができるものなんですか」
「グレイフォードは魔王と手を組んだのか?」
「だとしたら、我々は…ブラックフォージ領はもう…」
恐怖が伝播したのを見計らって、オズワルドが続ける。
「安心してくれ、そう何度も撃てるものではないだろう。それに制御にも失敗していた。咄嗟のことだったのでうっかり守ってしまったが、攻撃の一部はグレイフォードの砦にも落下していたからな」
勘のいいメルが気づく。
「強大な魔力を持つが、制御に難のある魔法使いがグレイフォードにいる…ということっすね」
「そういうことだ」
いかに勘がよくても、正しい答えにたどり着けないこともある。
「しかし、なぜこれまで攻撃しなかった…。いや、そうか制御できないからだ。すみません、俺は少し混乱しているようです」
謝るルシアンにオズワルドはねぎらいの声をかける。
「気にするな。あんなことがあった後で冷静でいられる方がおかしい」
死にかけた直後にまともな思考など働くわけが無い。
「先に行っておくが、俺の考えも憶測だ。ただし、最悪のケースの話をしている」
傭兵達が息をのむ。
この場を掌握しているのはオズワルドだった。
何が起こっていたにせよ、これからオズワルドが発した言葉が彼らの真実になるだろう。
「状況を整理すると。グレイフォード側の魔法が暴走し、共倒れになりかけた。しかし、敵であるはずのブラックフォージが防御魔法を発動し、攻撃を防ぐ。その際にグレイフォードも防御魔法によって守られた」
メルが思考を巡らせつつ、続ける。
「この状況でグレイフォードがもう一度魔法を発動する可能性は低いっすね。また暴走するかもしれないし、暴走しなくても防御魔法に弾かれるかもしれないっす。グレイフォードにとって最悪なのは魔法が暴走した挙げ句、グレイフォードにだけ防御魔法が展開し、自滅すること…」
傭兵達がメルの言葉に感心する。
さすがメル副隊長!
副隊長あったまいー!
「でしょ~~?」
得意げにしているが、実際はだいぶ的を外している。
だが、それでいい。
真実を知ればメルたちにとっては千載一遇のチャンスになってしまう。
【メテオレイン】を抑止力にしてグレイフォードを脅しつつ、侵略しようとするだろう。
そうなったら最悪の場合、オズワルドはブラックフォージの英雄として、グレイフォードの人々を【メテオレイン】で殺して回ることになる。
弟カルドはその力を利用して、更なる侵略を目論むだろうし。
オズワルドは弟の手駒としてさらに多くの人間を殺すことになるだろう。
【チート・クラフト】の成長次第では王の喉元にも届くかもしれない。
だが、殺戮の果ての栄光をオズワルドは望んではいなかった。
かつて世界を救った英雄たちにも軽蔑されてしまうだろう。
それに、オズワルドはできる限り働かず、それなりに食っていければそれでいいのだ。
オズワルドは一切の真実を語らずに、続ける。
「だから俺はここで、グレイフォードに乗り込むつもりだ。あの大規模攻撃魔法は危険すぎるからな」
グレイフォード側の魔法だと誤認させ、警戒させる。
これをしくじれば戦争まっしぐらだ。
何も知らない傭兵達が怖気立つ。
オズワルドは単身敵地に乗り込もうとしているように聞こえるからだ。
(ブラックフォージのために命がけで作戦を遂行しようと…なんて忠誠心の高い方だ…)
前からたまにこういうことをする男ではあったものの、何度見てもとても気がしれない。
オズワルドは自分を傭兵だと言っているが、その忠誠心は正規兵以上に見える。
「いや、あんなインチキみたいな魔法が出てきた以上。今ある戦力を全投入してでもグレイフォードを陥落させるべきなんじゃないっすか? イチかバチかになるっすけど…」
「イチかバチかで兵を動かすな」
メルがひうと鳴いて押し黙る。
「グレイフォードに渡りたいという商人がいる。その傭兵という扱いでグレイフォードに潜入し、術者を叩く。制御に成功する前にな」
傭兵達が商人レティの方を見る。
「大丈夫か?」
「いくらなんでも民間人を軍事作戦に組み込むのは…」
「かわいそうですよ」
レティは周囲に心配されてようやく気づいた。
最悪の場合、暗殺に加担した罪で縛り首もありえるのだ。
「無理にとは言わない。どうするかは自分で決めろ」
レティは即答した。
「行きます。グレイフォードに渡れたらそれで十分です。後は自分でなんとかします」
なんて勇敢な商人だ。
あなたの勇姿は未来永劫語り継がれるだろう。
そうはやし立てられたレティは一応、嬉しそうな顔をする。
しかし、その裏では気づいていた。
オズワルドが嘘をついているということに。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます