『惨殺されたがチートでインターネットをもらったので、異世界で自由な生活を始めます』

第1話：惨殺の代償

眠る直前、俺は自宅で、突然現れた白いローブの男に襲われた。

「フム、これが次元を越えた生命体か。魔珠の有無を確認させてもらおう」

男が手をかざした瞬間、声も出せず、体も動かせない。

まるで全身が真空パックされたような感覚だ。

冷たいナイフのようなものが腹に当てられ、躊躇なく引き裂かれた。

激痛。

そんな言葉で表せない、人生最大の痛みが俺を襲った。

腹を割かれ、内臓が体外に出る冷たい感触。

男は俺の腹を覗き込んだが、すぐにその顔が怒りに歪んだ。

「…チッ、なぜだ！ 魔素の反応は確かにあったというのに、核となる魔珠が存在しないだと！ この賢者様の転移魔法の消費、帝国の期待、全てが無駄になったというのか！」

男は激昂し、腹を割かれたままの俺に手を突きつけた。

「貴様ァ！ その代償を払えッ！」

次の瞬間、全身を激しい嵐のような魔力が襲った。

肉体が内部からバラバラに引き裂かれ、細切れになる、言語化できないほどの凄絶な苦痛に晒されながら、俺の意識は白い光の中に消えた。

俺の意識が、暖かく、だが何もない白い虚無の中に漂っているときだった。

「……俺は、死んだはずじゃ？」

【コバヤシ・ダイキチ様。世界の管理不備による被害、深くお詫び申し上げます。これは当方からの最大限の謝罪と優遇措置です。】

「管理者？ あなたはどなたで、ここはどこなんでしょうか？ 私は殺されたかと思うんですが……」

俺の問いに対し、声は情報を提示した。

【あなたを殺害したのは、異世界の「帝国」に仕える賢者です。この世界では、過去、魔珠を狙った戦争や人狩りが横行しました。そのため、管理者の権限により介入し、管理対象である住民を殺害した場合、殺害者も被殺害者もその場で砂となって消滅するという制約を設けました。これにより、現在、人間の魔珠を採取することは事実上不可能になっています。しかし、人間の魔珠の性能は魔獣の物の100倍近くになるという事実がしられています。帝国は「この世界の管理者による制約が及ばない、別の世界の者ならば、その制限を回避できる」と誤認しました。そして、賢者をあなたの世界に送り込み、魔珠が存在しないにもかかわらず、賢者はあなたを殺害しました。】

【賢者は、あなた方の世界の管理者からの抗議を受け、既に消滅処分されました。そして、今回の管理不備の謝罪として、あなたが異世界で生還するための付与措置と、唯一の優遇措置を施します。】

「付与措置？ 優遇措置だと？ 勝手なことばかりしやがって！ 元の世界で俺が惨殺死体だって娘や息子が知ったらどうなる！ 子共に親父のバラバラ遺体なんて見せられるか！」

「孫だってこれから大きくなって困っても助けてもやれない！」

俺は激情をぶつけるが、相手は感情を挟まずに淡々と説明を続ける。

【あなたの死因は心筋梗塞による病死として処理します。また、コバヤシ・ダイキチ様の精神安定措置として、孫娘様の未来についても、ケガを負わず病気にかからず金銭的にも精神的にも充実した人生を地球の管理者の下で保証します。】

最大の懸念が消え、俺は安堵した。

冷静になった俺は、付与措置の中身を問う。

「正直まだ呑み込めませんが、誠意見せていただいてるのはわかりました。ありがとうございました。その付与措置と、唯一の優遇措置を教えていただけますか？」

【まず、付与措置について。あなたがすぐにこの異世界で生きていけるよう、あなたを殺害した賢者の持っていた魔法と異世界の知識の全てを、あなたの意識に付与しました。また、肉体には周囲の魔素を無制限に吸い出すタイプの魔珠を作成しました。これらは、あなたの生存のために緊急的に施された措置です。】

「…… 付与？ 私に？ 　… なんだ、さっきから頭の中に流れる、『古代語魔法辞書』みたいなのは！ 『異世界ゴブリン図鑑』、 これは魔法についてのデータか！」

【知識と魔珠は、この世界で生き残るための最も重要な基盤です。そして、あなたの唯一の優遇措置（チート）は、インターネットシステムです。】

【最後に、あなたの優遇措置であるインターネットについて補足します。このシステムは、異世界の管理者による「疑似システム」として再構築されており、検索や買い物は可能ですが、書き込みやメールなどの外部への干渉は全て弾かれます。また、異世界の貨幣での決済も可能です。特に、システム内の【売買システム】では、あなたが採取や狩猟で得た異世界の物品を、異世界時価の8割で即時買い取ります。これがあなたのこの世界での主な資金源となります。そして、賢者を送り込んだ帝国は未だに人の魔珠を含む資源を求め、異世界への侵略を企図していますが、管理者の権限により現在は厳重に禁止されています。彼らには神託で警告を出していますが、従っていません。あなたには警戒を促します。】

全ての説明が終わり、俺の意識は再び強烈な光に包まれた。全身が新しい肉体にねじ込まれるような、奇妙で不快な浮遊感が襲う。

「――っく！」

俺が次に目が覚めたとき、全身は冷たい土と湿った苔の匂いに包まれていた。

（なんだこれ。57歳でヨボヨボの体だったはずが、肌がツヤツヤしてるぞ。30代後半くらいか？ これが、転移か！……まあ、いい。とりあえず、インターネットだけは使える。それが全てだ）

理不尽にも程があるが、もう嘆いても始まらない。

「やれやれ...。まるでゲームのチートプレイか。とんだ災難だったが、インターネットが使えるなら、まあ、どうにかなるかね」

俺は半透明のインターフェース、すなわちチートシステムを操作した。

「孫娘や家族の心配はいらん。なら、この異世界で、趣味全開で快適な生活を送ってやるか！」

まずは、この能力がどれほどのものか、そして生活の基盤となる「チート」を検証する必要がある。

俺はシステム内の【インターネットアクセス】を起動し、メニューを呼び出した。

「まずは食いもんからだな。腹が減っては戦はできんしね。」

検索窓に『カロリーメイト チョコレート味 』と入力し、購入手続きへ進む。

決済画面には、日本の円だけでなく、異世界の貨幣の表示もある。

管理者によると日本にある俺の資産がここで使えるとのことだ。

ここで資産使ったら、子供たちの遺産が無くなってしまうと思って聞いてみると、あくまでも資産分を使えるようにしただけであちらの世界には関係ないらしい。

残高みてビックリ。

クルマや家、死んだ後の生命保険も資産扱いで、500万もないはずの資産が5000万近くなってた。

・・あっちで生きてるうちに欲しかったなあ。

ススキノで豪遊したり、行ってみたかった土地行きたかった。

思わずカロリーメイトの注文止めて、ネット注文で高いローストビーフ丼とお茶を頼んで、来るのをドキドキで待ってた。

あれ？ちっとも商品が来ない。

おかしいなと再注文しようかとネット開くと猫のマークと「購入品お届けのお知らせ」と出てる。

ク〇ネコヤマト？！　ついに、異世界までとかないよね・・

マークをタッチすると「取り出せます」の表示が。

恐る恐る手を入れたら確かに手の上にどんぶりを載せてる感触。

そのまま引くと、ローストビーフ丼が手の上に。

宅配BOX方式かよ。

なるほどなあ、大きい買い物はどうなってるんだろうなと思いながら、ローストビーフ丼を貪り食う。　美味い！

いやー、死んだからか、若返ったからか腹が減ってた。

食べたら、こんな得体の知れない森で食い物の匂いさせるとかヤバいだろって事に気づいた。

周りの森から何やらザワザワとした雰囲気感じる。

すぐにインターネット開いて散弾銃を購入。

さすが神様使用、海外から銃も買えるので、北海道でも使ってたベネリM4カスタムを、サクッと購入して弾も買う。

まずスラッグ弾、これは熊などの大物用の弾だ。

オークとかオーガとやらが出てきたら必要だろう。

次に、OOバックショット、8ｍｍの弾が9粒入っている猿や狼系には良く効くだろうし、幾らかだが当てやすいのだ。

バックショット、スラッグを交互に装填する。

これで、二発撃ったら必ずどちらの効果も期待できる。

更に、ストックと腰に弾を付ければ、全部で40発超えるので、かなり戦える。

これで武装できたが、かなりビビってる。

北海道で撃ってたというのは、銃に憧れて免許取っただけだ。

シカ撃ったのも、先輩ハンターに連れられて撃っただけで、解体なども先輩ハンター頼り、クマは撃ったことない。

つまり、命に向けて撃ったのはシカだけ。

もし、ゴブリンやオークだと、人型なのでハードルが高いなと。

現実逃避で、そんなことを考えてたら、ついに来た。

うん、やっぱりゴブリン。人型だよ・・

知識は入ってたけど予想より十倍キモくて怖い。

思わず、全部燃えてしまえと森の中なのに、知識だけで火魔法撃ってしまった。

結果は軽く皮膚焼いて、辺りが臭くなって怒らせただけだった。

使い方が間違っていたのか、確かに火は出たがガスライターのガス充満した部屋でボンっと一瞬着いたような、火だった。

怒って向かってくるゴブリンに向けて、思わずベネリを乱射した。

散弾銃のこの弾を、人型の、しかも子供位の相手に乱射したら上半身は、ほぼひき肉だ。

俺は思わず息をのむ。

お互いに動けなかったが、ゴブリンたちのほうが早く動いた。

汚いナイフをもったゴブリンが、右から来たので思わず撃つ。

次に、左から来たゴブリンに、散弾銃向けた時に弾が切れた。

こん棒を、腕で防いだがかなりのダメージだ。

痛みをこらえ、排莢口の弾を込めて胸に押し付けて撃つ。

まだ二匹いるが、三匹を倒した俺から距離をとってる。

その隙に、弾が空の俺は、構えたまま弾を装填していく。

背を向けて逃げ出したゴブリン達を撃ち、初戦闘は終わった。

怖いし、痛いし、これが戦闘かぁ・・

防いだ腕が痛む、次は死なないように防具も付けなきゃな。

疲れたよ、パトラッシュ・・