雨上がりの点鬼簿

こはく

開幕

 夏の悪魔が緞帳をたくし上げた。静まり返った、陳腐な朽葉色の観客席には衣擦れの音だけが響き渡り、湿っぽくカビ臭い劇場には——俺たちこそが紙吹雪なんだと言わんばかりの厚かましい様子で——埃が舞い上がる。


 客は僕だけ。見るに耐えないし誰も見やしない、三文でも高すぎる一人芝居。それでも僕にとっては、かけがえのない最高傑作だったのだと——気づいた頃には、あまりに遅すぎた。

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