僕達のパズルは肉塊でできている
@ekatuki
プロローグ
「きゃーーー!」
小さな一軒家に少女の悲鳴がこだまする。
少女は両手で顔を覆い、
しかし興味はあるのか
指の隙間から小型テレビ、それが
写している映画を見ていた。
ジャンルはホラー、
よくあるゾンビパニック物である。
「うるさいなぁ、
そんなに怖くないじゃないか。」
少女の隣では、少年が両耳を手で塞いだ姿勢で、器用にパズルを完成させていた。
少年は続ける。
「近所迷惑とか考えないの?」
「怖いんだもの、仕方ないでしょう?
あとパズルは足じゃなくて、
手でするものじゃない?」
少女は全く悪びれることなく、少年に意見する。
「両腕を無くした人に同じ事を言えるかい?」
「それは無くした人の場合でしょう?
貴方が今、耳を塞いでいるものが何か分からないの?」
「…」
少女からの鋭い一言に少年は黙るしかなかった。
静かな部屋に、くぐもった悲鳴や銃声だけが響いている。
少年は耳を塞ぐのをやめてパズルを片付け始め、
少女はまた食い入るようにテレビの画面を見つめ始めた。
もちろん、覆うという役目を果たせていない指の隙間から。
その時、不格好なチャイムの様な音が鳴った。
「ほら、きっと苦情だ。」
「…きゃー!」
少女はテレビにくぎ付けで、
気付いているのかいないのか少年を見向きもしない。
少年は一つ大きな溜息をついた後、インターホンを確認せずに玄関へ向かう。
その手には一丁のハンドガンが握られている。
そして、ドアを開けて相手が見えた瞬間、
パンッという乾いた音と共に相手の脳漿が吹き飛んだ。
バタ、というよりベチャと言った方が的確であろう音をたて、
久しぶりの来客は玄関を盛大に汚しながら倒れ、動かなくなった。
「…」
少年は面倒くさげな表情で目の前の腐った肉塊を眺める。
少女はテレビの中のスプラッタに心を馳せていて、こちらを見ることも無い。
「手伝ってくれたった良いのに。」
少年は掃除道具を取り出して、玄関の掃除に取り掛かる。
「きゃーーー!」
小さな一軒家に少女の悲鳴がこだまする。
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