SYの真相に迫る!独占インタビュー
「感謝してるんです。私を、立ち直らせてくれた名前だから」
そう言い、世間を騒がせ続けている中年の作家は笑った。華々しいデビューを飾った彼女が若手時代から同じ悪役の名前を使い続けて、もう十数年になる。
「私、就職に失敗してすぐやめちゃって。そこからずっと閉じこもってたんです。何をするにも気力がわかなくて、一時期は死んでやろうって思ってた時もありました」
記者は笑って話されるにはいささか重い内容を事細かにメモに書き記し、作家に「それを支えたのが例の名前の方ということですか?」と問うと、作家は笑って首を横に振った。
「いや、支えたとかではなくて。なんていうんでしょうかね、思うと『なにくそ!』って頑張れるというか」
「仲はよろしくなかったんですか?」
「良い悪い以前の問題だと思いますよ。あっちはきっと私のこと覚えてもいないとおもうので」
記者はなるほどと頷き「キャラクターの誕生背景には複雑な人間関係」と書き加えた。
「ところで、長年例のSYについてのインタビューは断り続けていると聞きましたが、今回お受けしてくださったということは、何か心境の変化があったということでしょうか」
「もういいかなと」
「と、言いますと?」
「SYの名前も広まりましたし、時間的にもう言っても良いころ合いかなと思ったんです。それに、そろそろあの人からも卒業しなきゃなって」
「ということは、今後は別のテーマで作品を執筆していくということですか?」
「そういうことです」
「なるほどなるほど! 先生の新作、非常に楽しみです! それで、最後の質問なんですが」
記者は満足げにペン先を走らせた後、笑顔に少しばかりの下世話な表情を覗かせながら疑問を口にする。
「SYをただの登場人物としてでなく、悪人として描写し続けた理由は?」
作家はその言葉に、同じようににっこりと笑って答えた。
「ずっと忘れないでいてほしいので」
※この作品はフィクションです。実在する人物、地名、団体とは一切関係がありません。
名もなき罪へ、楽しい復讐を きぬもめん @kinamo
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