3.愛の清算と究極の拒絶
3.愛の清算と究極の拒絶
深夜、タクミはユウキに淡々と脱退を告げた。
「そうか。お前の人生だからな。…だが、安心しろ。俺のメロディとアオイの歌声さえあれば、トリニティは終わらない」
ユウキは、自分の才能がすべてを打ち破り、タクミの人間的魅力を凌駕したと確信した。彼は、タクミの献身が**「従属」だったことの証明だと感じ、勝利という名の孤独な頂点**に立っていた。
その後、タクミはアオイと二人きりになった。スタジオには無菌室のような静寂が満ちていた。
「…ごめん、穂尊」アオイは声を殺して泣いた。
タクミは、彼女の瞳を見つめた。心臓が切り裂かれるような痛みの中で、彼は強く言い聞かせた。
「僕らが結ばれたら、この音楽は終わる。そして、君はユウキの曲を歌えなくなる。…君の歌声と、ユウキの才能を守りたい。ユウキの才能は、世界にとって俺の愛よりも価値がある。それが、俺の愛だ」
アオイは顔を上げ、涙を流しながら、すべてを投げ出す覚悟で正直な言葉を口にした。
「それでも、私はあなたを選びたい。あの頃の、おにぎりを三人で分けた頃に戻りたいの…」
タクミは、その告白と、過去の純粋な幸福への願いに胸を切り裂かれながら、首を横に振った。
「その愛は、俺が受け取ってはいけないものなんだ。君の歌声は、世界の光なんだ。俺の愛よりも、君の才能のほうが尊いんだ。…俺たちの罪は、これでお終いだ」
彼は、愛する人の告白、過去の友情、そして原罪を、相手の成功のために自らの手で拒絶し、永遠に葬った。アオイは、その究極の自己犠牲と、彼の献身の深さを理解し、ただ静かに頷いた。
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