第2話 少し話そうよ

 早朝、園芸部のマドンナ。夢咲六花ゆめさきりっかさんにあやうく服を水浸しにされる所だった。


 この六花さん、天然なのか計算なのかよく分からないが。かなりそそっかしく危なっかしい所がある。


 同じクラスでいつも六花さんを見てる俺は知っているんだ。


「私の何を知っているのかな? 平良くん」


「あれ? 俺、口に出てた?」


「うんうん。出てた。出てたよ。可愛い六花ちゃんにその花束をぜひぜひ献上けんじょうしたいってね」


「……絶対に嘘だろう。うんうん。嘘じゃない。嘘じゃないよ~! しかしあれだね~! その花束は本当に色々で綺麗なお花だね。私の大好きな六花のお花もあるみたいだしさ。綺麗だ。綺麗だね~! 平良くん」


 こやつ、まさか。学校に頼まれて持って来た高級花束を狙ってるのか?


 いや、このハイエナの様な目。狙ってるおるな。


「貴様。六花殿よ。この花束は渡さぬぞ」


「なぬ? それは良くありませんね。お代官だいかん様。ぜひぜひ、その賄賂、この園芸部員の夢咲六花にお送り下され~!」


 ……夢咲さん。相変わらず。こういうお馬鹿なノリ好きだよな。ノリノリで乗ってくれるわ。


「ならぬ! 控えおろう!!」


 ペチンッ!と夢咲さんのデコにデコピンを喰らわせた。


「あぅ……痛たた。な、何をするの? お代官様~! これは賄賂ではございませぬ~!」

 

「当たり前だ。デコピンだからな。それで俺への水かけ未遂事件はチャラにしてやろう。越後屋えちごや。これにて万事解決なり~!」


「ハハハ……プッ! アハハ! 平良くんノリ良すぎるよ~! こんな朝からさぁ~! 笑った笑った」


 夢咲さんはお腹を抱えて大笑いし始めた。どうやら笑いのツボにハマったらしいな。


「ハハハ! 悪い。夢咲さんがノリ過ぎるからな。それじゃあ、俺は職員室に行くからさ。また教室でな。じゃあ……」

「うんうん。職員室だね。分かったよ。その綺麗な綺麗な花束は職員室にかざられるんだね。了解了解」


「夢咲さん。お主、俺が職員室から離れた途端。この花束をどうする気なんだ?」


「え? え~と。園芸部の部室に飾ろうかな~! なんて? 駄目?」


「駄目に決まってんだろう? 変人園芸部」


「ふぁいだ?! もー! またデコビンしおって~! 平良くんは私の頭を何だと思っとるのかね~?」


「ん? 自滅のタチバの主人公みたいな石頭かな」


「うわ~ん! 例えキャラの頭の固さ表現が酷すぎるぞ。平良くん! せめて花道君くらいの頭の固さが良かったかも」


「……花道? 誰だし」


「え~! 知らないの? スラダン」


 スラダンって……俺、ブルーなロック派世代なんだがな。


 


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