第17話「雫」
戦いが終わり、現実世界へ帰還したシゲオの元にハルキは駆け寄った。
「シゲオ先輩!」
「すまないハルキ…カッコ悪いとこ見せちまったな…。」
潤うシゲオの瞳にハルキは涙した。
「そんな事ないです…!とてもかっこよかったです…!!」
歩み寄る長身の影。
「いやぁええ戦いやったな!お疲れさん!」
「タイラ…。」
「ごめんなぁ。つい本気出してもたわぁ。あまりにも弱すぎて…!」
その言葉を聞いたハルキはタイラに拳を振りかざそうとした。
「ハルキ!待って!」
タクトがかろうじてハルキを止める。
「離せ…!いくら先輩だろうと戦った相手をディスるのは違うだろ…!!」
「それは分かるけど…手を出すのはまずい…!!」
睨み合う二人の間を引き裂くようにある男が介入する。
「2人とも喧嘩はよそうか…。」
「あ、あなたは…!」
「ごめんね。タイラに悪気は無いんだ。僕が代わりに謝ろう。」
ゆっくりと頭を下げるその男は…。
「せ、生徒会長…。」
「さぁ、タイラ行こうか。」
「おう…。」
会長に従うようにゆっくりと歩き出すタイラ。
タクトとハルキはシゲオをかばいながら歩いて行く。
「お前…書記のヨシカゲを倒した1年だろ?」
「は、はい。」
「あの戦い見てたぞ…。ほんとすげぇな。格上相手に…。」
「いえ…とんでもないです。シゲオ先輩こそ凄いかっこよかったですよ!」
励ますタクト。
しかし、疑問を抱く。
「何で最後諦めたんですか…?」
「あいつが言ったLPR-4649ってあっただろ?それ本当は俺が一番欲しかったものだったんだ…。」
「カード…ですか?」
「あぁ…。「リミテッドプロモーションカードよろしく」って言ってな…。この世に1枚しかない希少なカードなんだ…。」
「そんな希少なカードだったんですね…。」
「あぁ…まさか対戦相手がそれを持っていたなんてな…。俺は諦めちまった…。嫉妬したんだ…。」
このゲームにおいて、嫉妬や羨望は致命的であることは重々承知していたタクト。
しかし、実際にその光景を目にするとタクトの心境も恐怖に満ちていた。
「だが、タクト。お前なら大丈夫だ。お前は強い。」
「先輩…。」
「タイラを…生徒会を…必ず倒してくれ…!」
地に落ちる雫。
強く握るタクトの肩。
「はい…!必ず倒して見せます…!」
「シゲオ先輩…俺は…?」
続く
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