みるきー☆じゃんぷ
ましろとおすみ
⭐️ファースト・スター 『悲劇の姫は…?』
むかしむかし、きらめく星々が散りばめられた、それはそれは美しい天上の国がありました。その一角に住む織姫は、かつて神々のため息を誘うほど見事な織物を織り上げる、天帝様ご自慢の娘でした。
ある日彼女は、天の川の対岸で牛の世話をする青年、彦星と出会いました。二人は瞬く間に恋に落ち、晴れて夫婦となりました。結ばれた喜びは大きく、二人は仕事も手につかなくなり、毎日毎日、ただ寄り添って遊んでばかり。織姫は機織りをやめ、天の衣棚は埃をかぶり、彦星が世話をしない牛たちは痩せ細ってしまいました。
この状況に、織姫の父である天帝様は大層お怒りになりました。「これでは天界の秩序が乱れる!」と、天帝様は非情な決定を下します。きらめく天の川をさらに大きく広げ、織姫と彦星を川の東西に引き離してしまったのです。
愛する彦星と離れ離れになってしまった織姫は、広大な離宮の一室に閉じこもり、一ヶ月もの間、誰にも姿を見せなくなってしまいました。
近隣の星A
「織姫様今日も姿を見せないね。」
近隣の星B
「そうだね。心配だね。あんなに嬉しそうだった笑顔はもう見れないのかな。」
心配した周囲の星々は、遠い天の川の対岸を見つめる織姫の様子を、静かに見守っていました。
その様子を御殿から見ていた天帝様は、胸を痛めていました。
(…娘がこんなに悲しむなんて…1年に1回くらいは会うことを許してやるか…)
天帝は安堵と、かすかな罪悪感を覚えながら、離宮の扉の前に立ちました。
天帝
「織姫よ。父だ。少し顔を見せなさい」
天帝の声に、返事はない。部屋の中は薄暗く、空気が淀んで、静まり返っている。
天帝が、部屋の奥へ一歩踏み込もうとした、その時だった。
ゴッ……ゴゴゴゴゴゴゴ……!
部屋の奥、巨大なシャンデリアが吊るされていたはずの天井付近から、異様な唸り声が響き始めた。そして、足元の豪華なペルシャ絨毯の下から、微かな振動が伝わってきた。天帝は立ち止まり、不審に思う。この静けさは、悲しみのそれではない。まるで、巨大な何かが息を潜め、起動を待っているような……。
次の瞬間、織姫の嘆きの象徴であるはずの部屋は、一転して戦場と化した。
ドォオオオオオン!!!!
轟音とともに、強烈な閃光と熱波が天帝一行を襲った。天井を突き破り、壁の豪華な装飾が粉砕される。それは、部屋全体を巻き込んだ、文字通りの大爆発だった。
立ち込める白い煙の中から、煤だらけになりながらも、満面の笑みを浮かべた織姫が宙に舞い上がった。その背中には、見たこともない、複雑な機構を持つきらびやかなメカが装着されている。
オリヒメ
「ヤバっ! できたし! これ、超アガるんですけど〜!」
オリヒメは高らかに叫んだ。
その傍らには、七夕飾りのようなAIロボット、タナバタが、必死に体勢を保っていた。
タナバタ
「…オリヒメ様。わざわざ屋根を吹き飛ばす必要…ありましたか?」
オリヒメ
「見てコレ! アタシ特製、宇宙最速(多分!)の『みるきー☆ジェットパック』じゃん! 星屑エネルギーと神界素材をめっちゃフューージョンさせて、マジやばい推進力ゲットだよ!」
興奮気味にメカについてまくしたてる織姫。
タナバタ
「…ハァ。また全然聞いてない。」
オリヒメ
「これでもう、彦星くんのところにひとっ飛びだね! 待ってて、アタシの最推し! 今すぐ会いに行くから!」
その様子を近隣の星々は呆然と見つめていた。
その時、遠く、天帝様の御殿から、驚きと怒りの入り混じった声が響いてきた。
天帝
「ば、ばかもん! 何ということをしでかした! 屋根を吹き飛ばすなど前代未聞じゃ!」
天帝
「オリヒメ! どこへ行く気だ! 戻らんか!」
しかし、オリヒメはもう止まらない。ジェットパックの噴射を最大にし、満点の星空へ向かって加速していく。
オリヒメ
「お父様ぁ〜? ちょっと彦星くんとこまで行ってくるだけだから〜! お留守番よろしく〜! タナバタ、家と庭、ちゃんと整備しといてちょ! あ、お父様には内緒ね☆」
タナバタ
「…えぇ?オリヒメ様ーッ!?!?」
こうして、ギャルでメカオタクなオリヒメの愛と勇気とメカづくしの冒険が騒がしく幕を開けたのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます