第2話 ことの始まりはクリスマスに
「今年もクリスマスの時期か…サンタさんにお願いする子どもたちが親だと知った時の絶望の顔を見てみたい…」
「なんて最低なこと言ってんだよ…」
「お前人の心とかないんか?」
「無いよ。だって天野だもん。」
この酷い言われようは心外であるとしか言えない。今日はクリスマスの2日前、俺がサンタさんを罠に嵌める方法を子供たちに伝授しようと画策していた時に浴びせられたチクチク言葉だ。
言ってきたやつを順に悪意を込めて紹介する。
最低とか言ってきたthe陰キャを極めた細いのは透。
心がないとか言ってきた身長だけ無駄にあるのが黒井 清人。
心がないと断言してきた奴がロボットマニアの木村 勇気だ。
今はこの4人でハンバーガー食いに某チェーン店に来ているところである。このうるさい集団の周りの客が哀れでたまらない。俺はそう思う。
俺はこいつらに討論で勝つ。
「そうは言うがお前達も普段煽るだけしかできない脳味噌こし餡の最近のガキが咽び泣く様を見てみたくないか?」
これで勝てまい!
「酷い言いようだけど合ってるんだよなぁ…最近のガキやばいよな。」
「わかる!うちの弟とかこの間ライダーキックとか言って思いっきり自転車でひいてきたもん!」
「いやそれは普通に違うだろ…というかキックしろよ!それただの轢き逃げだろ!」
「「「「www」」」」
話が逸れた…ことはこの数分後に起きた。ふと思い出して俺がLINEをしたのだ。…してしまったのだ。「クリスマスプレゼントいる?」と…
これが世間のガキ相手なら優しいお兄さんか最悪不審者予備軍で留まるだろう、が、相手は透と分かれて3日で新しい彼氏を作り、最近別れて別の相手を好きになったという葉山だ。
ただの気まぐれだった。ほんの出来心だった。犯罪者の言う第一声の軽さと重さの相反する2つが入り乱れる理由がよくわかった。
「え!いいの!頂戴!何くれるの!?」
返信はすぐに来た。この時にはもう逃れられなかった。俺は今まで恋人を作ってはバレないように浮気し、乗り換え、を繰り返し影では優しい良い子だよというアピールをして生きてきた。しかし浮気に負い目は感じていた。だから最後にはみんなから嫌われるように仕向けていた。ある時は暴言、ある時は輪を乱し、ある時は自殺未遂までした。…それで死ねたらさぞ世界は平和になったことだろう。
俺は誰かに愛され求められたかった。
人間は強欲だから愛されても、求められても、上を求めてしまう。俺は…異常なほどに求めてしまっていた。このLINEも下心が多少なかったと言えば嘘になる。彼女は多少オヤジ臭いところはあるが基本純粋で一途なタイプである。そんな彼女に彼氏がいなく、よく彼女と透の相談に乗っていた俺からしたら格好の的であったのだろう。しかし…後から考えれば地獄と天国の同居であった。
LINE上
「クリスマスプレゼントねぇ…勢いで言ったは良いけど何欲しい?マイプリンセス」
「んー、何があるの?マイスレイブ?」
「んー、欲しいもの買える範囲で言ってくれたら買うよ?」
「あと奴隷じゃねーし乗っかってくんな」
「えへ、バレたか…」
「でも欲しいものないなぁ…強いて言うなら彼氏とか?」
「お前、根は優しいし可愛いんだからすぐできるだろ」
「この間ふられた」
「どんまい、いいヤツ紹介する?」
「いや、いいよ…碌なやついなさそうだし」
「俺の幼馴染は最高級の良い奴らだぞ!殺すぞ!」
「こわ!まぁ…相談には乗ってよ」
「もとよりそのつもりだったけど何?」
「彼氏の作り方教えて!」
「国土錬成陣でも作れば?」
「なにそれ?」
「知らねーならいいや…真面目な話いいやついないの?周りに」
「いないねぇ…」
「タイプは?」
「一途で優しくて私を大事にしてくれる(名前は出せない某大物俳優)みたいな人!」
「…俺かぁ」
「違うよ!って否定したいけど当てはまってそうなのが癪だなぁ…」
「でもあんた恋愛感情とかないでしょ?キメラだもん」
「張り倒すぞ」
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