恋愛未満(AI添削バージョン)

あかねっち

第1話 ガール ミーツ ボーイ


るいの通うダンススクールはビルの1階にある。

入口のドアを開けると、すぐに大きなダンススタジオが広がり、レッスン中の音楽がいつも聞こえてくる。奥には少人数用のスタジオがいくつもあり、いつ来ても人の出入りでにぎやかだ。


そのはずなのに──。


「おかしいな…」


るいのママに頼まれ、ダンスシューズを届けに来た美里は、受付に誰もいないことに首を傾げた。レッスンのある日は、廊下が狭く感じるほど人がいるのに。


靴を脱いで下駄箱に入れ、そっと廊下を進む。

すると、一番大きなスタジオのドアが半分開いていた。


中を覗くと、鏡の前に誰かが立っている。


「……るい?」


呼びかけかけた美里は、慌てて自分の口を手で押さえた。

シルエットはそっくり。でも髪が違う。

るいはサラサラの直毛ショート。

けれどその人の髪は、柔らかいカールのかかったショートヘアだった。


──違う人だ。


動揺していると、その人物がゆっくり振り返った。


白Tに薄手のグレーのパーカー、黒のスウェットパンツ。

背丈はるいと同じくらいで、手足が長く、顔が小さくてバランスが完璧。


そして何より、光っていた。

本当に後光でもついているんじゃ…というほど。


その“光っている人”は、美里を見た瞬間、ふわっと笑った。


「君、いつもるいと一緒にいる子だよね?」


な、なになになに〜!?

(美里の頭の中はザコシショウでいっぱい。)


わずか数秒で、美里は完全に心を持っていかれた。


近くで見ると、さらに破壊力が増す。

人懐っこい笑み、猫っぽい目元、きれいな黒目、形のいい唇。

男子特有の威圧感がまったくない。

アイドル?ダンスの先生?それとも何者!?


「俺、同じ高校の2年の本川。るいと同じチームでレッスン受けててさ。」


美里は固まった。


(こんなかっこいい人が同じ高校に!?

 ノーマーク…!くっそ、いつもるいに張り付かれてて気づかなかった!)


慌てて何か言わなきゃと口を開く。


「わ、わたくし、るいの幼なじみで1年B組24番、柿崎美里です!」


出席番号まで言ってしまい、恥ずかしさで爆発しそう。

本川先輩はぷっと吹き出した。


「るいも話し方変わってるけど、周りの子もそんな感じなの?」


ち、違う!

るいはうちでは“るい語”って言われてる人類の突然変異なんです!

と言いたいのに言葉が出ず、口をパクパク。


あ、そうだ、シューズ!


「これ、るいが忘れて…渡してもらえますか?」


「さっき言ってたわ。親に頼んだって。」


「お母さん急用で、私が…」


「なるほど。じゃ俺、受け取っとくよ。」


スッと手を差し出され、美里はテンパりすぎて、


「か、かたじけない」


と謎の時代劇口調に。

先輩は笑いながら、


「やっぱりるいと似てるね。その辺の人は個性派揃いなのかな?」


美里は首をぶんぶん振るしかできなかった。

恥ずかしすぎて耳まで熱い。


そんな彼女の反応が面白かったのか、本川先輩はやわらかく微笑む。

その視線だけで、美里は天へ召されそうだった。


そのとき。


「あれー?みぃー?なんでここに?」


コンビニ袋を下げたるいが帰ってきて、2人をキョトンと見た。


「なんで、じゃない!あんたが忘れたシューズ持ってきたのよ!」


美里は一気に現実世界へ帰還した。



本川先輩に軽くからかわれ、美里は真っ赤。


でも、ここで何もしないのは惜しすぎる。

こんなかっこいい人、生涯で何回出会えるんだ。


美里はぎゅっと拳を握り、勇気を搾り出した。


「先輩、あの…私、美術部なんですけど……モデルになってもらえませんか!」


「ヌードは無理だけど?」


「ひっ!」


美里の魂が抜けかけ、るいが慌てて止めに入る。


そこからダンス大会の話になり、美里は応援に行くことを即決。

るいは「みぃ、僕のダンスには来てないのに…」とブーブー言う。


帰宅した2人は、美里の家でいつものように言い合いになる。


「るいのせいで私の恋愛経験値ゼロなのよ!」


「なんでぼく!?」


「あんたが隣にいると脳みそが恋愛に進めないの!

 自分の顔面偏差値いくつだと思ってんの!」


るいは苦笑しつつも、どこか嬉しそうだった。


──昔から、美里はるいの味方だった。

 いつも、誰よりも強く。


美里には理由はわからない。

でも、るいが意地悪されると、身体が勝手に動いた。

条件反射のように。


(なんでだろう…)


物語は、美里のそんな小さな“違和感”を残したまま、静かに続いていく。

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