第12話 体育祭①

 琴葉の衝撃発言から一夜明けて、今日は体育祭の日。陽光学園には朝早くからたくさんの人が集まり、校庭には活気が溢れていた。そんな中、観客席の中に陰の気があふれる席が一つ。




「ついに...ついにこの日がきてしまった...」




 レナである。イベントと名がつくものが大の苦手のレナにとって、体育祭とは拷問のようなものだ。あふれる活気にレナの元気がどんどんと吸い取られていく。もはや輪郭を視認するのさえ難しいほどだ。




「おいレナ!呑気に消えかかってるんじゃない!レナも一応魔法戦の補欠として登録してあるんだからな!少しは準備しておけよ!」


「勝手に登録しておいてそれはヒドイのでは......」




 ちなみにこの事実がわかったのは昨日の夜。このことを知ったレナが声にならない悲鳴をあげたのは言うまでもない。




「おう白木、期待してるからな!」




 そう快活に話しかけてくるのは大河だ。




「そもそも私は出たくないんですよ......」




 レナは頭を抱えながらそう言う。




「まあ、よほどのことがない限りレナさんが出ることはないと思うし、心配しなくてもいいと思いますよ」




 そう清らな声で言うのは、昨日爆弾発言をぶっこんだ琴葉だ。




「陰キャでコミュ障の私には出る可能性があるというだけでかなりのストレスになるんですよ〜」




 レナはそう泣き言を言う。だが、最初の頃と比べ、普通に他人と会話ができるようになっていることに、レナは気づいていなかった。








                        ◆








【ミニ話コーナー】


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1:選手宣誓


 




レナは観客席に座りながら朝礼台の方を眺めていた。そこには朝礼台に立つ校長先生と、選手宣誓を行う沙也加と大河がいる。




「うわぁ、私は絶対にできないや、あれ。こんな大勢の前で話すなんて、考えるだけでも鳥肌が立つ...」




 そんなことを考えながらぼんやりと彼らを眺めていると、




「俺達、赤組は白組の奴らを完膚なきまでに叩きのめすことをここに誓います!」


「...ん?」




 選手宣誓中に絶対に聞こえないような言葉が耳に飛び込んできた。驚いて朝礼台をしっかりと見ると、闘志ギラギラの大河がマイクスタンドをまるでロックスターのように握りしめている。そして、それをまたも闘志ギラギラの目で見ている沙也加。




「あの...選手宣誓ってこんな感じでしたっけ?」




 流石におかしいだろうと、レナは隣に座っている琴葉に聞く。




「多分、普通の学校では違うと思うんだけれど...まあ、陽光学園の伝統みたいなものと思ってもらえれば...」


「毎年、すげえ盛り上がるんだぜ。これを見るためだけに電車で2時間かけてくる人もいるくらいだからな」




 陽光学園の体育祭は基本誰でも観戦できるようになっている。もちろん入るときに持ち物検査などはあるが。




「カッコつけてないでさっさと渡せ!」




 そう言って大河からマイクを奪い取るのは沙也加。




「野郎ども!赤組をぶっ◯すぞ!」




 しっかりと放送禁止用語を言う沙也加。ヒートアップし過ぎである。


 ちなみにレナは白組である。自らの組のリーダーの様子に、いささか不安を覚えずにはいられないレナ。




「てめえ、マイク返しやがれ!」


「誰が渡すものか!」




 朝礼台の上でマイクを取り合う沙也加と大河。それと同時に、会場の活気は高まっていくのであった。






※ミニ話コーナーは次のエピソードに続きます

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