第1話:改札前のサプライズ

日曜の朝。ソウヤは片瀬江ノ島の改札を出たところに、約束の10分前に着いていた。

すると、カホが5分前くらいに改札を出てきた。――トイレで化粧でもしていたのだろうか。女子はいろいろ大変だよな・・・


ソウヤはカホを見て、思わず口にした。


「おーッ!」


「センパイ、それだけですか?」


「カホ、なんか…マジで…攻めてるな!じゃない?」


「女子にって何ですか!まあ、へそ出しですけどね」


「センパイのハートをわしづかみしようかと思って」


カホはいたずらっぽく笑った。


「まあ、陸上部だからこういうの慣れてるんですけどね」

「大会に出るときはいつもです」


さらりと言うカホに、ソウヤはお願いした。


「カホ、2メートルくらい前歩いてくんない?近すぎて、見えないから」


「センパイ、そんなのダメに決まってるじゃないですか!」


「乙女の柔肌をジロジロ見ないでくださいってば!」


「触っていい?」


「センパイ、触ったらぐーぱんで殴っちゃいますよ!」


「おへそ見ていい?」


「いー加減にしてください。絶対ダメですから!」


カホはニヤリと笑って、言い放った。


「でも、うまくいきました。センパイ案外ちょろいですね」


そして時計を見て、


「そろそろ時間です」


そう言ってレースのガウンを羽織ってしまった。


「あんまり長い時間見せて、センパイ飽きちゃうと台無しですから」


ソウヤが「そんな――」と言いかけると、カホはさらに挑発する。


「付き合ってくれたら、いくらでも見せてあげますけど。どうします?」


「じゃあ、カホと付き合います」


「じゃあってなんですか!そんな軽い気持ちで言われても却下です!」


カホはきっぱりと言って、受け付けてくれなかった。


なんだか、すでに主導権はカホにがっちり握られている気がした。

だが、カホのへそ出しに気が行ってしまったソウヤは、そのことにまったく気づいていなかった。


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