口は災いの元

遠街ユイハ

序章

プロローグ

「皆さん、こんにちは〜。今日も私達でダンジョン探索やって行きまーす」


明るい声が似つかわしくない石造りの洞穴に響く。

ここはダンジョン。人類の底なき欲望を満たす場所。未知を吐き出す謎めいた存在。

そして彼女達は、そんなダンジョンに潜る探索者だ。


「今私達は、池袋ニマルダンジョンに居ます」

「さて、今日は第6層を攻略していくよ〜」


コメント:始まった

コメント:今日も可愛い

コメント:気を付けて〜


ダンジョンは危険と隣り合わせだが、それも人間の慣れの前には障害にもならない。

いつからか、配信者達がエンタメにしだし、視聴者の娯楽の一つとなった。


コメント:ニマルダンジョンって獣系の魔物がでるんだっけ

コメント:と言っても6層ならコボルトとかだし

コメント:コボルトでも群れるじゃん


「大丈夫ですよ!群れても3,4体なら余裕ですから!」

「そうだね。でも少し気を付けて」

「分かっているよ」


しばらく歩いていると、唸り声が聞こえてきた。


「…っ!近くに居るよ!」

「何体ぐらい?」

「おおよそ3体くらい」


彼女達に緊張が走る。

しばらくすると、曲がり角から4体のコボルトが出てきた。

コボルト達は武者震いしながら襲い掛かってきた。


「フォーメーションA!」


まず、盾持ちの少女が先頭のコボルトの体当たりを防ぐ。

すかさず、カトラス使いがタンク役の脇から体当たりしたコボルトを斬りつける。

傷は浅いが、それでも怯んだ。


「炎よ、起これ。前へ!」


魔法使いの少女が怯んだコボルトの両脇のコボルトに向けて火球を2つ放つ。

先頭のコボルトに気を取られたコボルト達に火球が当たる。火球が身体に当たり、吹っ飛ぶと同時にコボルト達を燃え上がらせる。

先頭のコボルトの喉笛に向けてカトラス使いが斬撃を振るう。

飛び散る鮮血、と同時にコボルトの胸に刺さる穂先。そう、槍使いの一撃だ。

燃える仲間を尻目に最後尾のコボルトがカトラス使いに爪を振るう。


「グルゥ!」

「くっ…!」


かろうじて左腕を盾にしたが、それでも痛む。


「傷を、癒やせ。綾香へ!」


左腕の傷が光とともに癒える。

痛みを力に変え、カトラスを振るう。


「グルァッ…!」


力強く振るわれたカトラスが、コボルトを切り裂き地に叩きつける。

間髪入れず踏み込みカトラスで胸を突く。

少しの抵抗の後、心臓へと達しコボルトの命を断つ。

次は、と思い顔を上げると燃えていたコボルト達もメンバー達によって倒されていた。


「ごめん、少しやられた」

「いえ、大丈夫でしたか?」

「少し傷んだくらいかな」


コメント:気をつけてもろて

コメント:やられた時ビクッとした

コメント:心臓に悪いわ〜


「皆も心配かけてごめんね」

「やっぱり、油断してたかねぇ」


そんな会話をしているあいだに、コボルト達は塵になっていく。

ダンジョンでは、魔物を倒すと塵になり、アイテムへと姿を変える。


「ドロップは牙と爪ね」


コメント:これでいくら位?

コメント:確か1本6〜800ぐらい

コメント:合わせて3200か…

コメント:まぁ、わりかし取れるし…


微妙なのも無理はない。

ダンジョンの上層の魔物から取れるものは基本的にダンジョン外でも代用可能な物ばかりなのだから。

それこそ下層などで取れるものは、ポーションや魔法剣、果ては霊薬などが出てくると言われている。

だが、それらもセレブ達の世界での噂なので、彼らも本当かは分からない。


「…ッ!前方から来る!凄いスピード…!」

「全員、戦闘準備!」


前方から走ってきたのは、2つ首の怪物。


「オルトロス!なんでここに…」

「呆けてないで、構えて!撤退戦よ!」


オルトロスの眼が5人を捉える。


「「ウオォォォーン!」」


オルトロスの巨大な前脚が振るわれる。

咄嗟に盾を構えるも、あっさりと叩き潰す。


「静佳!」


オルトロスの両顎が開かれる。


「「ウオォォォーン!!」」


オルトロスの咆哮がハウリングで増幅される。

それを防ぐ暇も無く、4人は吹き飛ばされる。

吹き飛ばされた4人を視界に収めながら前脚を持ち上げる。


「静佳、逃げて!」


その声に反応せず、静佳はオルトロスの攻撃を待つばかり。

そこに振るわれるオルトロスの前脚…!


「イヤァァァ…ッ!」


「Hglk」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る