第10話 クラス内で

「Bクラスともなるとかなり普通ですね。いえ、こういう学びの場自体は、どこも同じようなものでしょうか」


「多分そうだと思う。そうじゃないと後から差が開くし...それは学園側も本意ではないんじゃないかな」


「かもしれませんね。相性の悪い方と当たらなければ良いのですが...」


 少しの不安を抱えた中、指定された席に座った。

 1番後ろの席だが、別に黒板が見えづらいことは無い。


 映画館方式なので、こっちの方が席としては高くなっていて、普通に見える。


 それからぞろぞろと人が入ってきたが、アリアさん曰く、ほぼ侯爵家と伯爵家上位の数名らしい。


「伯爵家が後ろ側?」


「はい、何かあるかもしれません」


 そして、先生が入ってきた。


 きっちりとした服装をしているし、普通に声も聞こえる。


 どうやら、アリアさんの予想は外れたらしい。


「では、皆さんも知っての通り、こちらが決めた組み合わせで戦ってもらいます」


 黒板に文字が書かれていくが、最初から俺とアリアさんの出番だった。


 しかも、相手は侯爵家...そして、アリアさんの表情が悪くなった。


(相性が悪かったのか?)


「ナガトさん、もしかしたら、私はナガトさんの事を庇えないかもしれません。自分の身は自分で守れますか?」


「うん、大丈夫だよ」


「アルフェラッツ家は代々、炎魔法を得意としています。さらに、炎魔法だけならば、公爵家にも匹敵するとさえ、言われています」


「なるほど、ペアの人はどういう人だろうか」


「炎魔法と相性が良い魔法、もしくは補助魔法の使い手だと思われます」


「補助魔法か...なるほど」


 確か俺の魔法にも補助魔法があったはず...今のうちにかけておこう。


(えっと...魔法威力上昇と魔力消費量減少っと)


 後はなにか出来ないかと考えた俺は、あることを思い出した。


 それは、アリアさんが炎魔法に弱いと聞いた時に作ったポーションだ。


「ポーションって使っていいんだよね?」


「はい、ポーションは買う、もしくは自身で作ったものは持ち込み可です」


「じゃあ、これ」


 俺は鞄の中から赤く光るポーションを取り出した。


 分かりやすく着色したのだが、炎耐性のポーションである。


 効果がどのくらいあるのか分からないが、多少は効くと思いたい。


「これは...なんのポーションですか?」


「炎耐性のポーション...試作品だけど、料理の火くらいなら防げるよ」


「気休め...とは思いませんよ。ありがとうございます」


 アリアさんは柔らかい笑みを浮かべてくれた。


 ちゃんとやりますので、心配しないでください...なんて言葉でもかけた方が良いのかな?


 今の俺がそう言っても、説得力なんてないんだろうけど...。


「移動しましょう」


「うん、アリアさん、リラックスだよ」


「...はい、ありがとうございます」


 とはいえ、相手が炎魔法なら、今日の火球みたいにゼロエアで、完封出来るはず。


 相手の威力とかそういうのが関係ないから、普通に最強だと思う。


 その割には魔力消費少ないし...うん、ショートカットキーが欲しいね。


 そして、俺達は転移魔法で場所を移し、バントを支給された。


命の危機に瀕したら、安全地帯に飛ばしてくれる優れものである。


「命の心配がないのは、ありがたいですね」


「致命傷にはならないけど、怪我はするから気をつけてね?アリアさんは女性なんだし、怪我したらダメだよ」


「ふふっ、ありがとうございます」


 その後、闘技場...なんか、闘牛士が戦うような丸いステージに連れてこられて、目の前には対戦相手である侯爵家の人がいる。


 ひと目でわかる。俺の苦手なタイプだ。

 あの、いじめとかを平然な顔でする人の目をしている。


「俺様の相手は引きこもり姫かよ。これじゃあ、すぐに勝負が決まっちまうな」


「アラフェラッツ侯爵子息、お手柔らかにお願い致します」


「おーおー、ちゃんと可愛がってやるよ。嬲るくらいなら、ちょうどいいだろ。はっはっはっ」


 この下卑た男の目、勝って何をするかは明白ということだろう。


 死にはしないのだから、前世の腹いせに苦しんでもらおう。


 それにしても、アリアさんは冷静だな。


 あんな事言われれば、多少は腹が立つはずなのに。


「では、両者位置に着いてください」


「はい」


「では、始め!」


「アイシクルランス!」


「ファイアウォール」


 それは合図がかかった瞬間だった。


 いち早く氷魔法を放ったアリアさんだったが、あの男が、迷わず防御魔法を展開した。


 まるで読まれていたかのように...。


「思ったより威力が高ぇな。俺が炎魔法じゃなかったら、貫かれていたかもしれねぇ。だが、相性が良くない時点で、それは読めるぜ?」


「流石は公爵家に匹敵すると言われるだけありますね。判断能力と先読みの能力が異常に高い」


「じゃあ、こっちの番だな...ファイアボール」


「何故、1番弱い魔法を?」


「弱い?違うな。これで十分なんだ....よ....」


「っ!?それがファイアボール!?」


 この男のファイアボールは、入学式で俺達に飛んできたファイアボールの数倍の大きさと威力。

 きっとこの男の力もあるだろうが、横にいるあの女の子の魔法だろう。


(補助魔法か...俺よりも遥かに高い精度だ)


「ナガトさん!一緒に防御魔法を!」


「分かった...けど」


「ウォーターベール!」


「アクアベール」


 一応、防御魔法を展開したけど、そもそもあの男の攻撃はこちらに届かない。


 もう、終わりだ。


 次の瞬間、目の前からアラフェラッツ侯爵子息は居なくなっていた。


「勝者、リベルタス家」

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