第6話 新たな宇宙の旅

〈アルカディア〉外縁軌道から遠ざかる機動艇の窓に、深い宇宙の闇が広がっていた。

星々の瞬きは静かで、まるで祝福しているかのように光を落としている。


「……本当に、アルカディアを離れたのね」

リィナは艇の操縦席で、手元の解析装置を眺めながら静かに呟いた。


アリアは外を見つめる。

「ええ……でも、まだ旅の始まりに過ぎない」


彼女たちが手に入れた「古代文明のデータ」は、想像以上に膨大だった。

人工太陽の暴走を止めたことで目の前の危機は回避できたが、データが示す宇宙規模の謎は、まだ全く解明されていない。


「アリア、軌道都市の外に別の信号がある」

リィナがスクリーンを指差す。

微弱なエネルギーパルスで、古代文明の通信と思われるものが点滅している。


「人類よりずっと前の文明……?

一体どこまで広がっているの、宇宙は」


艇が信号の方向に進むと、突如、巨大な影が浮かび上がった。

光を反射する金属の外殻。明らかに自然の天体ではなく、人工的な構造物だった。


「……巨大すぎる」

アリアは息を飲む。


「接近します」

リィナが解析装置を操作すると、信号の発信源はこの構造物の内部であることが分かった。

「内部に入れば、より詳細な情報が得られます。

ただし、生命反応も検出されました。誰かいる、かもしれません」


アリアは操縦桿に力を込めた。

「行くわ。私たちがこの謎を解かないと、誰も解けない」


艇が巨大構造物の開口部に滑り込み、内部に進入する。

暗い空間の中、光源が微かに揺らめき、巨大な機械の残骸が無数に散らばっていた。

その中で、二人は不意に生命の気配を感じる。


「……誰かいる」

アリアが低く呟くと、リィナも頷く。


突如、光の粒子が集まり、目の前に一人の青年の姿が浮かび上がった。

金属製の装甲のような外見だが、目は人間と同じ深い色をしている。


「……あなたたち、継承者……?」

青年は柔らかく、しかし確信を持った声で言った。


「誰……?」

アリアが警戒する。


「私は、外宇宙探査機構“ノヴァ連邦”の観測員。

あなたたちの行動をずっと追っていた。

古代文明の残滓と、継承者の存在が宇宙全体に影響する可能性があるからだ」


アリアは息を呑む。

「私たち……宇宙規模の話に巻き込まれてるの?」


「そうだ」と青年は頷く。

「あなた方の能力は、この文明の残したシステムに直接干渉できる。

だから連邦は、あなた方の力を必要としている」


リィナがアリアの手を握る。

「……また戦い?」


「戦い、調査、そして探索」

アリアは拳を握った。

「でも……私たちの力で、未来を変えられるなら、行くしかない」


青年は微笑み、光を帯びた掌を差し伸べた。

「なら、共に行こう。新たな宇宙の旅へ」


艇の外、無数の星々が二人を見守るように瞬いている。

アリアはその光に背中を押されるように頷いた。


「行くわ……リィナ」

「はい、第一継承者」


二人は新たな航路を目指して、外宇宙の闇へと漕ぎ出した。

それは、人類と古代文明、そして継承者の未来を繋ぐ長い旅の始まりだった。

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