超短編集1
1――留守番――
家に帰ると母がいない。
夕飯の買い出しにでも行っているのだろう。
テーブルの上には1枚のメモが置かれていた。
母の字だ。
「誰が来ても、絶対に玄関を開けないで。」
その時、玄関の向こうから母の声がした。
「開けて、忘れ物したの。」
私は玄関に向かう。
おかしい。鍵は閉めてないから、そのまま開ければいいはず。
私は怖くなり、自分の部屋で本物の母の帰りを待った。
2――深夜の通知――
深夜3時。
スマホの通知音で目を覚ます。
こんな時間に誰が…
私は差出人を確認する。
―差出人不明―
内容は『今、あなたの後ろにいるよ』
微かにヌっとした鼻息が、頬をかすめた気がした。
3――影――
誰もいないはずなのに、壁に影が映った。
俺の影ではない。
手を振ってみたら、その影もゆっくりと手を振り返した。
4――足音――
私はマンションに住んでいる。
近頃、夜中の2時22分になると、天井から絶えず『トントン』や『タッタ タッタ』と誰かが歩く足音や、子供が走り回る足音が聞こえてくる。
おかしい。
私はマンションの最上階に住んでいて、上に部屋はない。
一番怖いのは、日に日に足音が大きくなっていること。。
まるで、私の部屋を探しているように。
5――人形――
俺が子供の頃に、祖母からもらった古い市松人形。
目は閉じていたはずなのに、祖母が亡くなった翌日から、俺をじっと見つめている。
その市松人形の目からは、どことなく優しさが溢れていた。
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