第2話 男子だけの学園に潜入

 

 

 ……これは入学前の話


 - 藤岡家リビング


「私、男装して入学しようと思う……」

「……え!?」

「いや思いきり良すぎるし、彼女を男子だけの場所に行かせる   なんて彼氏として承認できない!それなら俺が潜入する!」


「でも!響くんが心配だし、男性同士で付き合ってる人が多いところに幸輝を行かせるの心配だよ!」

「もし幸輝が潜入したら、帰ってきたときに彼氏できたから別れよなんて言いそう……」


「響の話ほんとにあることだと思ってるの?あれは大げさに言ってるだけでしょ?」

「それに雫が一番大切だし、もし雫が男だったとしても選んでるって胸を張っていえるぐらい好きだよ。」

「私も幸輝が女の子だったとしても選んでる。」

「わかった、幸輝に任せる。でも浮気したら許さないからね笑」

「もちろん!でも雫も俺がいない間に浮気しないでね……?」


「そんな捨てられた子犬みたいな目しないで笑」

「大丈夫、離れてても幸輝だけだよ!それより響くんをしっかり見つけてきてね!私もできるだけもっと調べてみる。」


 彼女は男装のたために髪を切る予約、光の上学園の入学試験問題の取り寄せなど準備を進めていたらしい。一応俺にも相談しないと!思い出してくれたみたいだ。寸前でも思い出してくれて良かった。男なんて狼ばかりなんだから、雫が潜入したら食べられてしまうところだった。

 こうして俺は響を探すためにこの学園に入学することになった。



 ……そして入学後

 この学園に通ううちにわかってきたことがいくつかある。

光の上学園は男子のみが通うとあって、学園内は異性愛者がほとんどいない。それをこの学園に通っていた幼なじみで親友の響に聞かされた時は、大げさに言っているものだと思っていた。だか入学後、嘘ではなかったと、自分自身で実感した。

 

 まず生徒会のメンバーは人気投票で決定する。生徒会メンバーが式典の壇上や学食に現れる際には、抱いてー!や抱かれたいー!などの黄色い悲鳴が響きわたる。(男子しかいないのだが)最初に聞いたときは、何か事件が発生したのかと驚いた。

 

 次に俺自身が告白されることが多いことだ。

 雫と同じ学校だったときは、俺と雫の関係性があまりにもあからさま(俺と雫は自然体だと思っていたが、親友やクラスメイトからするとあからさまだったらしい)であることや親友をはじめとするカッコいい男子が多かった。そのため告白されることはほとんどなかった。

 だがこの学園に入学すると自分よりも体格が大きい生徒によく告白されるようになった。好きですなどの告白はまだ許せるが、直接的に抱かせてくれ!と言われると男としては辛い。もちろん俺には雫がいるのでお断りしている。

 そして歴代の生徒会メンバーや目立っていた生徒の数人が行方不明になっているのだ。実際にいなくなった人物の名前はわからないが、噂がひっそりとまわっていた。亡くなったなどの情報はないが、学園在籍中に消息を絶ったり、卒業後の行方がわかってない人が幾人かいるらしい。

 といってもこの学園は人数が多いためそういった生徒がいるのは不思議ではないが、響の手がかりを見つけたような気がする。


 情報を探るために生徒会メンバーに近づきたかったのだが、どうにも外部入学の俺はまだつてがないのもあって親衛隊という団体にガードされてしまう。生徒会長を発見し、話しかけようとするも間に女の子のような小柄な人々が入ってきて、押し出されてしまう。女の子みたいに見えても力は男だなと思う。

 

 そうして何も進展がないまま一年が経過してしまった。

 生徒会メンバーも新しく投票が行われ新規メンバーになった。


会長 黒崎 朔也くろさき さくや

副会長 白銀 文也しろがね ふみや

会計 夢野 蘭丸ゆめの らんまる

書記 乾 亜樹いぬい あき

庶務 花房 立夏はなぶさ りっか


 以上が今年から生徒会メンバーだ。

 新しく生徒会メンバーが確立したことで、親衛隊メンバーも更新されるらしい。これはチャンスなのでは?

 とりあえず誰のこともよく知らないので一番偉そうな会長の親衛隊に応募してみようと思う。


 -会長親衛隊面接会場

(え、面接とかするのか…本格的だな)

「失礼します。2年A組の藤岡幸輝です。」


「どうぞお掛けください。私は前年度会長の親衛隊で副隊長をしていました東金 葵とうがね あおいです。この度新規で結成される会長の親衛隊の面接官をしています。宜しくお願いします。」

「ちなみに今年度は親衛隊には在籍しておりません。」


「宜しくお願いします。」

(前年度の親衛隊の人がそのまま在籍しているのかと思ったな。まぁ会長が違う人だしな。)


「早速ですが、なぜ親衛隊を志望しますか?」


「えっと、式典での挨拶から感じるリーダーシップや華やかな振る舞いで人を惹き付ける魅力を感じたためです。そして今後の会長の働きを影から支えて行きたいと考えたためです。」

(こんなもんだろ。まぁ会長が何話したか覚えてないけど。周りの生徒たちが悲鳴あげてたし、なんかすごいこと言ったんじゃないか?)


「なるほど..……あのワンフレーズからそこまで……」


「……はい!」

(え!?ワンフレーズしか話してないの!?

それで悲鳴なんであがってんだよ……)



(いくつか質疑応答したが、なかなかいいんじゃないか?)


「ではここまでにしたいと思います。」

「結果が決まったら教室に連絡のものを送りますね。」


「はい!本日はありがとうございました。」

(これってほぼ合格じゃね?)



 -2年A組


「藤岡さんいらっしゃいますか。」


 知らない生徒が教室の入口で俺を呼んでいる。


「はい!」

(親衛隊の合否だな。)


「少しお時間よろしいですか?」

「大丈夫です!」


……トントン

俺の肩を叩いたのは隣の席の野口 亮太のぐち りょうただ。


「どうした?」

「もしかして親衛隊入るの?」

「そうだけど、どうした?」

「なるほど……親衛隊って意外と恨み買いやすいから気をつけろよ!」


(こいつはわかりやすいほど良いやつだな)

「わかった!ありがとう!」



「すいません!お待たせしました!」

「いえ、そんな待っていないので大丈夫ですよ。

では親衛隊本部に向かいましょう。」

「あ!合格ですか!よかった!」

「……!すみません、合格と伝えるのが先でしたね笑」

「いえ!全然大丈夫ですよ!」



 -親衛隊本部


(女の子みたいな生徒が多いな。)

「失礼します。」


「ではこれで全員ですね!面接のときに会ったと思いますが改めて自己紹介をさせていただきます。前年度会長の親衛隊で副隊長をしていました東金です。私は本年度は親衛隊には在籍しておりませんので、親衛隊メンバーを選出するここまでが、私の仕事となります。」

「ここから先はここにいるメンバーで隊長、副隊長の選出、親衛隊の運営を宜しくお願いします。」


 そういって東金さんと俺をここまで案内してくれた方が退出していった。残った人数はざっと30人ほどか。


……無言はきついぞ

「えっと、2年A組の藤岡幸輝です。これから会長の親衛隊をやっていいくということで、皆さん宜しくお願いします。」


パチパチパチパチ



 全員分の自己紹介が終わり、とりあえず隊長と副隊長を選ばなければ……

 響の手がかりを探すために親衛隊に入ったはいいが、生徒会メンバーのガードというイメージしかないため、仕事内容を知らないぞ。

 とりあえず自由に動ける平隊員がいいな……


「隊員は藤岡くんがいいと思う!」

「賛成ー!」

「積極的に発言してるし、可愛いしね!」


……勝手に話が進んでいる!まずい

「俺は外部入学で会長を応援してる歴も短いし、もっとふさわしい人がいると思うよ!」


「謙虚なのもいいね!」

「人を好きになるのに時間なんて関係ないよ!」


「いやー!そんな……」

(やばい!皆いいこたちすぎて…でも隊員になりたくない!)


「藤岡くんが隊長になるのに反対の人ー!」

「いなーいでーす!」


「あはは……がんばります。」

(隊長ならより近づけるってことにしとこ…会長大好き人間みたく思われるのはきついが…)



 こうして俺は会長親衛隊の隊長になった。

 響……絶対見つけてやるからな……



プルル……

「はい」

「雫……俺、会長の親衛隊隊長になった。」

「え!?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る