終章:背負子が空になる時

 『見習い歩荷バッガー』よ、いつの日か君も、幾多の死線を乗り越え、一人前の歩荷となるだろう。

 君が真の喜びを知るのは、その時だ。


 狩りに出る日の出前、君の『背負子バックパック』は、万全に整備された『装備』と、仲間への『信頼』、そして未知なる砂漠への『希望』で、張り裂けんばかりに満たされている。その重さこそが、君の『準備』と『決意』の証だ。


 そして、長く過酷な狩りを終え、夕陽が翠点の壁を赤く染める頃、君は帰還する。

 その時、君の『背負子』は、驚くほど『から』になっているはずだ。

 包帯は仲間を癒すために使い果たされ、弾薬は敵を退けるために撃ち尽くされ、最後の食料は負傷した仲間に分け与えた後だ。


 その『空っぽの背負子』こそ、君が全ての責務を果たし切った、何物にも代えがたい『黄金の勲章』である。

 そして君は、自分の背負子が『空』になった代わりに、君の隣を歩く仲間たちの収穫袋が、翠点を豊かにする『獲物』や『素材』で満たされているのを見るだろう。


 何より、君は自分の隣を歩く仲間たちが、誰一人欠けていないのを見るだろう。


 背負子が『空』になること。

 仲間が『無事』であること。


 それこそが、我ら歩荷の、たった一つの、そして最大の『報酬』であり、『誇り』である。


 さあ、『背子パック』を背負い直しなさい。

 誇り高き、我らが同胞よ。

 君が背負うのは、ただの『荷物』ではない。

 『仲間の命』と、彼らが待つ『オアシスの明日』だ。


 ようこそ、『歩荷隊G.G.B.』へ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

『歩荷のすゝめ ~背負うは【命】、届けるは【明日】~』 火之元 ノヒト @tata369

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る