ピースループ

春瓜れい。

第1話 地獄の始まり

終わった……


自営業もここまでか、そう思ったのは夏半ば頃。赤字まみれで心の限界を迎えた。


「何でこんな思いしなくちゃいけないんだ、未来では幸せになれるはずなのに……」


俺は深く落ち込み両手で顔をふさいだ。


明日からどうやって生きようか、そもそも明日があるのか。


その時、アプリから通知が来た。

「今更新作ゲームなんて、なんだこれ」


スマホの画面を見てみると不思議なゲームがおすすめされていた。


黄色い背景に明るい雰囲気のあるキャラ、そして文字にはこう書かれていた。


「『幸せになれる学園ストーリー』……なんだよこれ、ほんとに幸せになれるのかよ」


一度は表示を閉じたが、気になって仕方がなかった。一度だけ、そう思いアプリをインストールした。


恐ろしく早いダウンロード速度に驚きを隠せなかった。そしてあっという間にインストールされた。


「これで幸せに……」

アプリのアイコンを押すと指が吸い込まれていった。


なんだよこれ、凄い吸引力だ!

まずい、入れなきゃよかっ……た……


俺はあっという間にスマホの中に入っていった。


◇◇◇


強い痛みと地面の冷たさを感じた。

どうやら住宅街の道路で俺は倒れ込んでいた。「ん、ここは?」


見覚えがないのに既視感がある。

なんとも不思議な気分だ。


ひやりとした気分になり、はっと思い出す

「やべ!遅刻する」


おかしい、俺はもう30歳手前なのに学校に行かないといけない、そんな気分でいっぱいになり、急いで学校に向かった。


場所がなぜかわかる、ゲームの使用なのか?

次々と道路を走り、曲がり、信号を渡っていった。


早くしないと先生に怒られる気がした。ただのゲームなのにリアリティがある恐怖が俺の胸を締め付ける。


なんでこんなに急いでいるんだよ。


これはゲームだろ?

実際の出来事じゃないのに、こんなに焦って、おかしくなりそうだよ。


もうすぐ学校に着く、このままだったら間に合う。


校舎が見えてきた。だが、テープを何重も貼られた校門に戸惑った。


「ここ一週間休校?」

それを見た俺は怒りがわいてきた。


「何だよ、俺が走った意味がないじゃないか。こんなことなら最初から向かってなかったのに」


拳を深く握りしめ、帰ろうとした。すると本が置かれていた。


何だろう。


【第一章攻略本】そう書かれていた、なんだ、攻略本があれば簡単にクリアできる。


そう思い、ページを開いた。


『仲間の方向を変えろ』


仲間?この近くに仲間なんていたか?

でも仲間を探さないと、未来は変えられない


探そう、そう思い、俺は走った、街中を探した、でもどこにも仲間もそれどころか一人もいなかった。


日が沈みだした。もうこんな時間か、早く帰って明日また探そう。


誰もいない我が家に帰り、一眠りした。

明日はきっといいことが起きる。


◇◇◇


日差しが強く感じ、俺は思わず目を開けた。

すると昨日と同じ住宅街の道路で倒れていた


なんだよこれ、まるで昨日みたいだ。

いや違う、これはひょっとしたらループしている?


そうだよな、ゲームって日にちなんてないもんな、それよりも仲間を探さないと、


何で俺は探しているんだろう。何か変わるかわからないのに、必死に俺は探す。


まるで地獄のループだ、こんなのならインストールしなきゃよかった!


そうして数日間探した。

一体仲間はどこにいるんだよ。


考えろ、仲間。


仲間は味方、


味方の方向を変えろ……


ん?


見方の方向を変えろ……!


俺は核心をついた気がした。

これはゲーム、そして攻略本はヒントでしかない。


見方を変える。


遅刻しそうになり休校、ほんとなら喜ぶはずなのに、それを自分の勝手な都合でネガティブにかえた。


そうか、このゲームの攻略法は……

「見方を変えろ!」


そういった瞬間ピンポンと正解のような音がした。


幸せになれるゲームなんとなくわかった気がする。


きっとこのゲームは本当の幸せを探すゲームだ、ゲームなら次は今より難しいはずだ。


でもどんなステージでも負けてたまるか、

そういっている間にドアが現れた。


「レベル・ワン」


俺はドアノブに手をかけ、ガチャリと開けた。


まぶしい光が俺を包み込む。


◇◇◇


開けた先は教室だった。


「幸一、今日は数学のテスト当日だが勉強はやったか?」


……マジかよ、

いきなり難易度上がりすぎだろ!

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ピースループ 春瓜れい。 @haruurirei

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