第2話 現実に現れる影

朝の光がカーテン越しに差し込む。

いつものように目を覚ました彼女は、昨日の出来事が夢だったのかと一瞬思った。

だが――机の上に置かれたクリスタルの欠片が、現実であることを静かに告げていた。


「やっぱり……あれは夢じゃなかった」


学校へ向かう道。

通い慣れた街並みが、なぜか少しざわめいて見える。

人々の声に混じって、聞き覚えのある“ノイズ音”がかすかに響いた。


振り返ると、電柱の影が揺れている。

影の中から、黒い“ひび割れ”のような光が滲み出していた。


「まさか……現実に!?」


クリスタルの剣を出そうと手を伸ばす――

だが、何も起きない。剣は電脳空間でしか現れない。


(どうすれば……!)


その時、ポケットの中で欠片が震えた。

淡い光が広がり、彼女の周囲に水の気配が漂う。


「……来ないで!」


水の流れが螺旋を描き、敵の影を弾き飛ばす。

しかし、完全には倒せない。

“ソウルを宿した武器”でなければ、フォールンは滅せないのだ。


そこへ、スマホに着信。

表示されたのは――

『東側の部屋より:助けに行く』


次の瞬間、目の前に光の扉が開いた。

炎の輝きを纏った少年が現れる。


「やっぱり来てたか……現実にも侵食が始まったんだ」


彼は静かに剣を抜き、赤いソウルを灯す。

二人は目を合わせ、無言で頷く。


「行くよ」

「――ああ」


水と炎が交わり、影を裂いた。


しかし、敵が消える間際に小さく呟いた。


『……次は、お前たちの“家”だ……』


二人の背筋を冷たい風が撫でた。

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