モンスタートランプ − スカイアンダーワールド −

佐藤ゆう

第1話 超難解試験

 TCG【モンスタートランプ】


 世界中に1億人以上のプレイヤーが存在する、超大人気トレーディングカードゲーム。

 このカードゲー厶のために創られた専門学校【カードアカデミア】。

 そのカードアカデミアへの入学試験が今日 始まる――。


 ◆


 ―― ドキ ドキ ドキ ドキ ドキ ドキ ――


 壮厳にそびえ立つ巨大な建物を見上げて少年『大空 天空(おおぞら そら)』は、心を高ぶらせていた。


 強くなりたい。ただ強く。誰にも負けないくらい強く。

 憧れのチャンピオンと戦えるくらいに――。


 覚悟を決めて天空は、カードアカデミアの中に足を踏み入れた。

 内装はシンプルだが高級感があふれていた。


 受付の女性係員に案内され、広間の扉を開ける。


 中には、今日の入学試験を受けに来た受験生が300名近く。


 放たれる受験生の熱気に一瞬ひるんだが、気合いを入れて一歩踏み込んだ。


「全員ぶっ倒す……!」


 決意して人混みの中に混じっていった。



 ――ビリリリリリリリリリッ!――



 大音量が、広間に鳴り響いた。

 照明が消され、暗闇の中から女性の声が――。


「ようこそ、受験生の諸君……」


 再度 照明が付き、広間の壇上が照らし出された。


 明るく照らし出された壇上には、麗しい見た目の 金髪の少女が優雅にたたずんでいた。


 後ろには、サングラスと黒スーツを身につけた男女がズラリと並んでいた。


「わたしは、このカードアカデミアの副会長『伊集院 麗子』だ。これから入学試験を行う――」

  

 受験生たちの間に緊張感が漂った。


「よく、このカードアカデミアの入学試験を受けてくれた。 君たちは大会などで結果を出した、選ばれた強者だ。このカードアカデミアには弱者は要らない。強者のみが必要とされる。 強くなりたい、誰にも負けたくない……そういった強い意志を持つ者が、これからの試験を勝ち上がれるだろう。 ――さあ、始めよう、試験開始だ……!」


 広間がまた暗闇に包まれた。


 しばらく暗闇が続き―― ガ タ ン ――と、広間全体が激しく揺れた。

 受験生たちに動揺が伝播していく。

 そのまま振動とともに、下降していった。


  ―― ゴ オ ン ――。


 どうやら到着したようだ……。


 照明がパッと付き、受験生たちは辺りを見渡した。


 さきほどの広間より、さらに数十倍の『地下空間』が広がっていた。

 その地下空間には、30を超える『円形の闘技場』があった。


 この闘技場の上でカードバトルをすることによって、ホログラム映像によって生み出されたモンスター達が、戦いを繰り広げるのだ。


 広大な地下空間に圧倒され、受験生たちから歓喜と驚きの声が漏れた。


( ここで……試験を受けるのか……? )

 

 緊張した面持ちで大空 天空は、汗ばんだ手をぎゅっと握った。


( 必ず受かってみせる! あいつを……! チャンピオンを倒すために……! )


 熱い闘志を心に燃やした。


《 これから試験の内容について話す 》


 地下空間に副会長のアナウンスが流れる。


《 ここはカードアカデミア。 当然、試験はカードゲーム『モンスタートランプ』に関しての事がすべてになる。 試験内容は、各自に事前に渡した200枚のカードの中から、52枚のデッキを組んでもらい、受験生同士でカードバトルをしてもらう。 一度デッキを登録したら変えることはできないので注意してくれ。 配布されたカードはすべてランダムになり、誰かとまったく同じデッキになることはないだろう 》


( 受付で渡されたカードか…… )


 腰のベルトに取り付けた、配布されたデッキケースを開けると、言われたとおり200枚のカードが入っていた。


《 3勝した者から勝ち抜け、次の試験に駒を進める。 だが、1敗でもすれば即試験終了となる。 それと、これは普通のカードバトルではない。 通常、バトルの初期ライフ【15】のところを、初期ライフは【1】に設定させてもらう。 それをよく考えたうえでデッキを組んでもらいたい。デッキ作成時間は30分……。その後、呼ばれた受験者が闘技場に上がり、カードバトルを開始してもらう。 君たちの健闘を祈る 》


 プツン――と、アナウンスが途切れた。


( ……さて、どうしたものか…… )


 200枚のカードを手に取り、1枚ずつ確認していく。


( ……ライフ【1】となれば、速攻で相手にダメージをあたえるデッキにするべきだろう。――だが、それでいいのか? ここはカードアカデミア……。強者のみが存在を許される場所…… )


 思考をフル回転させ、判断能力を研ぎ澄ます。


「よしっ、決めた――!」


 決意して、案内された控え室に向かって行った。

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