兵どもが夢の跡
- ★★★ Excellent!!!
栄華を極めた人たちはふっと消えるわけではない。
人々の心の中からは消えても、彼らの人生は続き、どこかで根を張って生きている。
最初に灯火が消されようとしたのは、幼子のさよです。
父は彼女に精一杯の思い出を残そうとします。彼女との思い出を抱え、どんな思いで帰路を歩くのか。そんな前触れのような雨が降り始めました。
そこで、とあるお大尽さまの家で番傘を借りることになり、番傘の持ち主である是七に出会います。
さよにとってこの出会いは深く心に刻まれます。番傘を返したい、もう一度会いたいという思いは、遊女に身をやつす彼女を支えたに違いありません。
しかし、長い時を経た再会は、互いに名乗ることのない静かな幕引きとなりました。幼い頃の身分の差、二人が歩んできた世界の違い、交わることのないガラスの向こうの世界を、ほんのひと時だけ、一本の傘が繋いだのかもしれません。