言えなかった言葉の行き先。
- ★★★ Excellent!!!
いつも軽やかで温度のある物語を紡がれる作者さまが、この作品では深い底の方から立ち上るような痛みを抱えて描かれているのを感じました。
その静かな悲しみの匂いに触れたとき、胸の奥に震えるものがありました。
この物語に描かれた「父」「骨の重さ」は、ただ肉体の質量ではなく、記憶やすれ違い、触れられずに残った沈黙ごと抱えあげたときの重みなのだと、深く沁みました。
きっと今も、見守られていると思います。
私自身も三十歳で父と別れ、しばらく涙が出なかった時期があります。
乾いた日々ののち、二年後に実家でうたた寝していた夢の中で、父に頭を撫でられたような気がして、その感覚で目が覚めたとき、ようやく涙がこぼれたのでした。
読ませていただき、ありがとうございました。
痛みをそのままではなく、透明な文章へと昇華して届けてくださったことに、深い敬意を覚えています。