第17話
お店を出ると、いつのまにかお店の前に
優くんの白いバイクが停めてあった。
「あれ?バイクどこかに置きに行ってたよね?
それにお会計は?」
いつの間にという現象が多くて
混乱する。
「気にしなくていいよ。
アイスのお詫び。」
「え、あ、アイス??」
「うん。スイカのやつ、落としちゃったじゃん。」
そう言ってまた、ふわりと笑った。
そういえばそうだったけど、それとは見合わないと思う。
この笑顔を見ていると、時々現実味を感じない現象が起こるから
いつか夢とか、思い込みだったんじゃないかって思ってしまいそう。
「あの、SNSとかには絶対に載せないから
思い出として
お店の写真と、バイクの写真撮っても良い?」
「どうぞ」
今日初めてバイクに乗った。
優くんと2人でご飯を食べた。
彼の事を少し知れた。
忘れないように。
現実だったと思い出せるように。
「撮れた!ありがとう!」
「帰ろうか」
そう言ってヘルメットを渡され
バイクに乗り、家の前まで送ってくれた。
腰へ回す手は、先程より緊張はしなかった。
「送ってくれてありがとう!
あと、ご飯もごちそうさまでした。」
「うん。
こちらこそ付き合ってくれてありがとう。」
「パーカー洗って返そうと思んだけど
いい?寒くない?」
「寒くないから大丈夫。」
「分かった!返す準備できたら連絡するね。」
「んー…。」
少し遠くを見て急に黙ってしまい
不安になる。
「あの…、」
「…返す準備出来てなくても、連絡欲しい」
こちらに視線を戻して
真剣な顔でこちらを見つめられ
どきりとする。
「分かった。」
これで今日はバイバイかな。
楽しかったから、一抹の寂しさを感じてしまう。
「それ「ねぇ、撮った写真見せて」
「え??」
それじゃあね、と言おうとしたら
遮られた。
「さっき撮ってたやつ、見たい。」
「…っ、いいよ!」
まだもう少し居てくれることに
少しニヤつきそうになるのを我慢する。
口元を隠すように画面を見るフリをして下を向き
アルバムを開き、スマホを渡した。
「バイクの写真欲しいんだけど、こっち送っていい?」
「いいよ!」
「他の写真も見ていい?」
「うん」
スマホを操作して、自身に写真を送ると
写真をスワイプしていく。
「これ、一昨日の日付のこれって…」
そう言ってこちらに画面を向ける
「繁華街行った時のやつだよ。
人沢山で、ギラギラしてるのを残したくて。
その時ね、1人で歩いてるのがすごく不安だったの。
だから好きな事して一旦気持ち落ち着けようと思ったんだけど
写真撮ったあと捕まっちゃった。」
「そっか。そうだったんだ。
写真の中でなら、あの場所は綺麗に見えるんだね。
それとも、イチカちゃんを通して写した場面だから
そう見えるのかな?」
「その写真に映る一面だけじゃ分からない事をどのくらい知ってるかで
人によって見え方は変わると思うよ。
写真だけじゃなくて、誰かから聞く話とかもそうだよね。
私はその写真を撮った時、景色を綺麗だと思って撮った訳じゃないよ。
だから、綺麗だと思った気持ちも
そんな綺麗なものじゃないと考えることも
私が関与してる訳じゃなくて
全部優くんの中のものだと思うよ。」
「…そっか。」
急に語ってガチレスしてしまって、恥ずかしくなった。
「あ、でも、私が撮ったものを
綺麗だって思ってもらえたのはすごく嬉しいよ!
ありがとね!」
焦って早口になる私に
優くんはキョトンとしたあと、クスクス笑った。
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