第12話
どこから話そうか…
と、ぶつぶつ呟く茉莉花に
何か聞かない方がいい事を聞いたかと不安になってきた。
「壱華は、『owl』ってチーム知ってる?」
知らないので首を振った。
「そっか。
簡単に言っちゃえば、不良集団って感じなんだけどね。
暴走族ほど、人の統制が取られてる訳じゃないの。
そもそも暴走しないしね。
北工業に通う人達の中で
トップになった人に着いていく人達を
誰かがそう呼ぶ様になったのがキッカケらしくて。
常に集団で行動する訳じゃないみたい。
だから、倉庫とか事務所みたいな本拠地は無いんだって。」
茉莉花は誰かからこの話を聞いたのかな。
やけに詳しい。
「それとね、owlのバックには、ヤクザが付いてるの。
あの繁華街のお店は、そのヤクザの管理管轄に含まれてる。
owlのメンバーは、そこの用心棒的な役割を代わりに担ってるんだって。
地元では有名な話だけど、壱華は少し離れてるから
その辺りは疎いよね。」
「owlの事は分かったけど、それが優くん達と関わってるって事?」
「うん…。関わってるというか、そのowlのトップが優なんだよ。
大和はNo.2で、旭と蓮司が幹部なの。
それで優は、バックについてるヤクザの組長の息子さん。
そもそも高校生が、ヤクザが取締まる区域を任されるのがおかしいでしょ。
それが罷り通るのは、優が組長の息子さんだから。
この話もあの辺りでは、有名なんだよ。」
そう言われれば、蓮司くんがあの辺りについて忠告した理由も
あの場に優くんがいた理由も納得はできる。
でも、優し気に笑ったり
申し訳なさげな表情をする、ふわふわしたあの彼が
想像するヤクザのイメージや不良達の上に立つ姿と
全く結び付か無かった。
「想像むすがしいなぁ。」
「私も実際に、何か怖い目に遭ったことがある訳じゃない。
多分、荒事が起こる前に
大和が先回りして見えない様にしてくれてるんだと思うから
私も皆んなのいつもの優しところか、面白いところとか、友達としての部分しか
分からないんだよね。
だから今壱華話したことも、私も殆どちゃんと理解できてる訳じゃないの。」
でも、今の話を聞いて
大和くんがわざわざバイクで送り迎えしてる事に
納得した。
もちろん彼女と一緒に居たいとか、心配だからとか
そういう恋人らしい理由もあるんだろうけど
繁華街近くに住む茉莉花が
厄介事に巻き込まれない様にという対策の意味もあるんだろうな。
それもまた、彼女へ向けた愛情で
それを茉莉花も分かってる。
素敵な関係だな。
そう思っていると
茉莉花は話疲れたのか、欠伸をして眠たそうにし始めたので
電気を消してベッドに入った。
聞いた話を反芻しながら
まだ2度しか会った事はない
白い朧気な彼を思い浮かべているうち
意識を夢の中へ手放していた。
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