初恋
つかさあき
第1話
1
「放課後、話があるから」
昼下がり、昼食を終えてぼーっと教室の窓から外を見ていたら、同級生のリコに小声で言われ、あたしはうんと頷きながらも心の中ではため息を付いていた。
リコは
かと言ってリコからのお誘いを断るほど愚かではない。問題が起こったのなら大きくならないうちに解決すればいいのだ。
そう言い聞かせ、お昼からの授業に挑んだのだが、黒雪姫とあだ名されるリコからの呼び出しは見当がついている。それだけに憂鬱な気分を打ち破ることは出来ないまま放課後を迎えた。
──てか、放課後どこに居ればいいってアイツ言ってたっけ? 教室? 体育館裏?
「場所くらい言っておけよなあ」
教室で用事があるフリをして、最後の一人になるまで居残っていたのに、リコがやって来る気配はなかった。
さて、どうしたものか。もう少し待つべきか、他を探すか。それとも帰るか。
三択が浮かんだが、ここでの◯はもう少し待つ、だろう。他を探しても当てがない。帰るのは間違いなく✖️だ。
三年B組の教室は校舎の三階にある。帰る生徒、部活動に励む生徒に顧問。秋の柔らかな日差しと相まって、青春って感じを演出している。
ともすれば、暮れなずむ放課後に一人健気に教室で待つあたしも、なかなか青春の一ページになっているんではないか? などとしょうもないことを考えていると、
「
ちょっと息せき切ったリコの声がした。
「ううん、待ってないよ」
嘘をつく。社交辞令とも言う。
本当はちょっと待ったかな、くらいは言ってやろうと思ったんだけど、リコがごめんなんて言うとは思わなかったから、勢いを削がれたのだ。
普段、自信満々で弱いところを見せないリコ。美しく、それなりに頭も良く、それら美点を時には打ち消すプライドの高い黒雪姫と呼ばれる彼女の謝罪の言葉。そんなん初めて聞いたよ。
「でさあ、話なんだけどね?」
いつも元気な、あえて言うなら強い口調のリコが、猫撫で声に近い声色でそれほど親密でもないあたしに話しかけて来る。
これは予感が当たったな、と思った。
「A組の
悪い予感ほど、よく当たるものだ。
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