予感
沙華やや子
予感
ンフ! 今度は人魚が登場するメルヘンを書くわ……締め切りまであと、1カ月、か。
長編は毎度ながら孤独なランナーの気分だわ。明けきらぬ薄暗い道をね、タッタッタ……と地道に走ってく感じ。
(作品はものすごぉく、愛しいしあたしのものなんだけど、早く大っきくな~れー。はやく大きくなって自立してくれーと祈る。少し子育てに似ているかな。ふふふ♡けど、過ぎてみると息子ともっともぉ―――――っとスキンシップしときたかったな。成人した今じゃ嫌がられて当然だものねアハハ。かわいかったなーぼうや……)
現在息子は21才で大学生。進学とともに巣立って行った。たくましいナイスガイだ。柚衣名ゆいなは来月39才。働き盛りだ。フリーライターの仕事もやっと軌道にのり始めた。物書きを始めてからは10年経った。独立してからはまだ3年。
人魚が……恋『されちゃう』お話にしよう。よく聞くお話の逆だ。人間に愛されてしまうのよ。主人公の彼女も情熱的に彼とLOVEの調べを奏でるわ。けれども…… っていう大どんでん返しみたいのがほしいな~。
ンー、ネイル塗ろーと。♪フンフンフンン~。奥底から湧き出るイマジネーションで歌う
ダーリンにもうすぐ逢えるもん!
運送業のダーリン
交際4年だがそんなの知らなかった! あんまり自分から自分のことを話さない、
彼の家には娘ちゃんが居るので、もっぱらデートはここ、
前はダーリンが童話に煮詰まっていた時にアイディアをくれた。
「その少女はね、キノコだったんだよ」だなんて突然言い出して、目が点になった。が!「それだ! ありがとっ」と
マーメイド……ね。物悲しいイメージね。そして妖艶で美しいわ。
瞳を閉じ、イメージの世界であそぶ
(あたしが……マーメイドで、
とても楽しい。子どもの頃からこうやって、夢とうつつのはざまに居るのがスリルがあって好きだった。
ンー、ネイルもすっかり乾いたし……お仕事お仕事! パッと目を開けた
……ここ、海っ!
(あたし、なんで呼吸できてるの?)
ふと自分の身体を見た。鱗がついてる!
(あ、あたし、お魚になっちゃった?)
しかし上半身は裸のバストがあった。
人魚だっ。
ピンポーン………。
玄関チャイムの音がし、
(ダーリン、あたしの
もう一度自分の身体を見る。(やはりあたし……マーメイド。そうしてここは玄関だって感じているのに、目にしているのは海の中よ? ……ということは、もしや、あたしの
扉を開けた。
ちゃぽん……っと綺麗な水の
わくわくとドキドキを抱え、やって来たひとを見る。
と、タ、タコ! 大蛸。オバケみたいな。
「あなた誰?!」慌てて尋ねる
すると蛸のお化けは悲しそうに答えた。
「オレだよ。
(驚きだわ。いつもおしゃれでカッコいいあたしのダーリン
「と、兎に角入らせてもらうよ? 家の中」「う……うん」
ふたりともが互いの体と自分の体を交互に見ては、首をかしげる。
「どうしちゃったのかしらね……ここってあたしの夢の中かしら?」
「え!? そんなことある? オレはただの登場人物なの?」
「よくわかんなーい」
「蛸さん……?」……。「はい……」
「だいすき――――――!」
胸を撫で下ろす
うふふ♡人魚と大蛸が幸せそうに抱き合っている。なんとも滑稽なムードすら。
「……ぉい、おーい!
なにかきこえる。
「どしたの?」合鍵で入ってきた
そこで、かくかくしかじかで……云々、と、さっきまでのことを説明した
「ン~きっと夢だったのね……ダーリン! ダーリン! ちょっとこわかったわ」
「もう大丈夫だよ、
「
美しい赤い紙バッグの中に大切そうに入っている四角い箱。金色の包装紙にブルーのおリボンが飾られている。
「うれしいわ! ありがとぉ……」Chu!! ふたりは熱いキス。
「……んふ~、開けても良いですか?」「良いよ」と
丁寧にリボンを解き金の包装紙を開くと、ワインレッドの箱が出てきた。
蓋をあけると……そこには金のチェーンに大きなアメジストがハートを模った、ペンダントが!
歓びを隠し切れない
(あたしたち、結婚するのね。なぜかわかっちゃった。 なぜ? ってだって……そうなんだもーん!)
予感 沙華やや子 @shaka_yayako
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