第8話感想

”ハロウィン”の時期に合わせてのことなのだろうか。

扉絵では、難しい表情で”UFOキャッチャー”に挑むくらげの視線の先に、

ミニサイズのキャラクターたちが並んでいる。

それぞれ違う”コスプレ”に身を包んだ4体のくらげの中央には、ミメイの姿が。

「ミニくらげ」の”コスチューム”の内訳は──探偵、ミイラ、エビ、魔法使い。


「欲しいのは、どれ?」という煽り文に答えるなら、俺は迷わず探偵姿のくらげだ。

スカートの着用で、”ガーリー”な魅力が引き立っている”オーソドックスな可愛さ”だからな。

さて、この中で「エビ」だけは”仮装”としてはやや”メジャーではない”ように思えたが、

それは今回のストーリーを示唆しているものだと、程なくして知ることになるのだった。


生徒会の活動を終えたと思しきミメイ。

一人で下校しようとしていた彼のもとに、くらげから電話が入る。

どうやら要件は──駅前のコンビニに月ミドのコラボグッズが残っているという報せらしい。

しかし、話の途中でくらげの様子が急変する。

何かが起きたのか、助けを求めるような声が聞こえたかと思うと、

通話は唐突に途切れてしまった。

生徒会長としての使命感から、迷うことなく駆け出すミメイ。


そして、彼が辿り着いた先で目にしたのは──

謎の女に”壁ドン”されるくらげの姿だった。

新キャラクターの登場である。その名は──海老奈シュリ。

ラジオネーム「えびのおすし」として、

リスナー甲子園に出場経験を持つ”有力投稿者”とのことだ。

くらげがリュックにつけていた月ミドの採用景品・キーホルダーを目にし、

どうやら”因縁”をつけてきたらしい。


俺がこのキャラクターに対して抱いた”感想”としては、

「やっぱり”描き分け”できねえな、この作者・・・」の一点に尽きる。

ぱっと見はくらげとまったく同じ顔で、髪型と髪色を変えただけにしか見えん。

第4話で初登場したなっちに続く、「水尾くらげの亜種」だ。


一応、くらげに比べて”たれ目気味”で、眉毛がやや太く描かれているようにも見えるが、

それもあくまで”申し訳程度”。これでは全然足りない。

たとえば、円形に近い今の目の形を潰してみて、目尻の下がった半円にする。

あるいは、「海苔」というあだ名がつくほどに眉のサイズ感を強調してみる。

このように、くらげとの”差別化”を図れる箇所は複数あるはずだ。

髪の毛を隠しても誰かわかる──それこそが”理想的なキャラクターデザイン”だろう。


「水尾くらげ」の造形があれほど”秀逸”なだけに、それは”独特”であってほしい。

あの顔が『さむわんへるつ』の世界において”一般的”なものとして描かれることによって、

くらげを”作品のメイン”たらしめる”特別感”は薄れ、

ひいては彼女の”魅力”そのものも半減してしまう。

くらげの女友達の野田や村上を見る限り、もう少しできることはあったのではないか?


作品の根幹に根付くこの”お粗末さ”に対しては、俺は”批判的立場”でいるほかない。

いくらくらげを生み出した作者とはいえ、残念ながら話は別だ。

ここで”私情”によって自分の”判断基準”を曲げてしまえば、

作品の”良し悪し”を見いだすための”審美眼”は、たちまち鈍ってしまうだろう。


少し”厳しい態度”を取ってしまったが、

俺が指摘した”欠点”を差し引いても、なおこの漫画への”高評価”は揺るがない。

今回もまた、これまでと同じようにストーリーを楽しむことができた。


まず印象に残ったのは、珍しく”怒り”を露わにするくらげの姿だ。

えびのおすしにミメイを「わけわかんないリスナー」呼ばわりされた途端に、

ムッとして「おのののか!間違えた!やんのか!」と声を荒げる。

その反応には、彼を”大切”に思う気持ちの強さがまたしても現れており、

直前の「森にふくろう」が認知されていることに対して「よかったね」と

誇らしげに微笑む彼女の姿と合わせて、”二度おいしいシーン”だった。


そのまま小競り合いを始めたうなぎポテトとえびのおすしを前に、

ミメイは次の大喜利のお題「ゲームセンター」で決着をつけてはどうかと提案する。

今週もまた、”体験”が物語の主軸に据えられている。


俺は”守銭奴”なのでゲーセンにはあまり興味がなく、行った回数も数えるほどしかない。

その感覚は今も変わらず、強いて言えば、あの”国民的アニメ”が初めてゲーム化されたという

『サザエさん まちがいさがし』を一度はプレイしてみたい──それくらいの関心だ。

だが、スマホゲームの普及や、先のコロナ禍の影響によって、

かつて足を運んだ店舗が次々と閉店してしまっている現状を前にすると、

ふと、胸の奥に”寂しさ”が生じる。


うなぎポテトとえびのおすしのゲーセン5番勝負は、

そんな”心の穴”を埋めてくれるような、久々に味わう”賑やかさ”だった。

ゲーセンについて考えさせられるおかげで、俺の”僅かな記憶”も掘り起こされていく。

これもまた”漫画を読む理由”の一つだな。


「「勝ち」ですわ」──

バスケゲームを前に第6話でのシュート練習の”成功体験”を引き出してイキるくらげ。

憎たらしいその”ドヤ顔”が実に良い・・・


だが、400勝投手の金田正一が生前口にしていた言葉に、

「言っちゃいけないことを吐いたら、神様は勝たせないの」というものがある。

『アオのハコ』でお馴染み、阪神タイガースの才木浩人が、

今年の日本シリーズで、「普通にやればウチらが勝つ」と抜かし

ネタにすらならない塩試合で淡々と黒星を喫したように――

舐め腐ったくらげも、また例外ではなかった。

天丼ボケをかましながら、地面に這いつくばる彼女の”惨めな姿”に、思わず笑いがこぼれる。


そのまま勝負は2勝2敗、全くの互角で進み、迎えた最終クレーンゲーム対決。

しかしここで、えびのおすしが本当は”リスナー仲間”と話したいだけだということが判明する。

その事実を受けて、くらげは「友だちにならない?」と手を差し伸べるが、

彼女は素直になれず、”捨て台詞”を吐いてそのまま去ってしまった。実に”損な生き方”だ・・・


──だが後日、くらげは大喜利コーナーでメールが複数採用される彼女を「友だち」と言う。

くらげの”優しさ”溢れるその締めくくりに、思わず心が温かくなる読後感を得られた。

2人が「リスナー甲子園」で再び相まみえることが叶うように、アンケートはしっかり1位だ。

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