さむわんれびゅー
イチスレイチアン
第1話感想
水尾海月・・・
今までのジャンプにあまりいなかったタイプの女性キャラクターだと思う。
この作品の”セールスポイント”になり得る「唯一性」だ。
俺は予告カットの時点で、「もしやこの漫画はやってくれるのでは」と思っていた・・・
ジャンプ誌上では編集部の方針なのか、やや希少となりがちな”モダンな画風”が輝いている。
この漫画の連載開始にあたって、あらかじめ作者のデビュー読切である
『金曜ミッドナイト・トーキング』を読んでいた身としては、
当時の”リアル調”の絵柄から、現在のスタイルへと至るまでの試行錯誤の跡が見て取れた。
ちなみにこのデビュー作は、後にこの作品の”プロトタイプ”であることが判明し、
そこには「瀬尾海月」なるヒロインの原型も登場している。
だがまあ・・・申し訳ないが、この「絶妙にその辺にいそうな面長女」で勝負していたのなら、
俺の興味関心は薄かっただろう。
だからこそ、”ブラッシュアップ”を重ねて、
少なくとも俺という一人の読者を逃さなかった努力に、まずは”加点”を与えたい。
やっぱりキャラクターは、目を大きくして全体的に丸っこく描くのがいいよな。
俺も自分で絵を描く中で「可愛い絵柄」を追求し、最終的に同じ結論にたどり着いている。
そういうわけで、作画面では連載前から強く惹かれており、
あとはその魅力を損なわぬ”内容”が伴っていてほしいと、密かに願っていたのだ。
そして世間に発表された第1話──ヤマノエイは、俺の期待を裏切らなかった。
海月は、元の瀬尾海月から”大胆なデフォルメ”が施されている。
ヴィジュアル面では、体格を縮めて”マスコット的”な印象を強め、
髪型は”クラゲ”のシルエットを意識したアレンジが加えられ、
性格面では、息を吐くように平然とした顔で”ボケ”を放つ──
いわゆる「痛い子」としての特徴付けがなされた。
その結果、”非現実的感”が増し、”キャラクター”としての存在感が立っている。
俺は、彼女を見て感動したよ・・
なんて”可愛らしい生き物”なのだろうか。
おそらく彼女は自分自身でもそれを”自覚”している。
小刻みに放たれる”型破り”な言動に主人公のペースを崩し翻弄する”挑発的”な態度。
あれは自分に”自信”がなければできないことだ。
それだけでない。
主人公とラジオを聴いているときの、彼の視界の外で展開される”一喜一憂”とした表情の変化。
”ダウナー”な外面に隠された”熱さ”というものを感じたぜ。
彼女を形容する英単語はまさに「hot」がふさわしい。
また、主人公・梟森未明も読切版から大きく変化している。
「文武両道の生徒会長」、「真面目な努力家」といった設定が加わり、
女の尻を追いかけていた佐々木未明よりも、ずっと”爽やかな男”になった。
デザインも、何気に”フクロウ”をモチーフにしていて、どこか可愛らしい。
ヒロインの相手役の造形に”不快感”を抱かせないこと──
その点にまで気を配っているのは、作品づくりとして誠実だ。
俺は漫画に対して”うるさ型”で、いささか”厄介な性分”をしている。
だが、それでも――久々に「好き」になれそうな漫画が現れたと感じている。
この漫画を”気に入った点”は、二人のキャラクターだけではない。
題材として「ラジオ」にフィーチャーしてきた点にも引き寄せられた。
”デジタル化”の進行によって「ラジオ離れ」が進む傾向はあるものの、
映像が無いことによって、”想像力”が普段よりも掻き立てられるという楽しみ方には、
たしかな”趣”があり、それはこれからも残り続けるべきものだ。
俺もラジオには”恩”がある。
過去に「色々」あって三か月以上、”精神科”の”閉鎖病棟”にいたことがあってな。
別にそこまで”恐ろしい場所”ではない。
俺以外の患者は”認知症”の老人で、
この”高齢化社会”の影響なのか「介護施設」と化している節があった。
深夜に大声で嘆き叫ぶ者や、
全裸の車いす姿で廊下を徘徊して看護師に怒られる者、
廊下に自らの排泄物を巻き散らす者などがいたが、
”身の危険を脅かすほどではない”ので、慣れればなんてことはない。
ただ”最悪”だったのは、風呂には1週間に1度しか入れなかったことと、
携帯電話等は持ち込み不可でインターネットにアクセスできなかったことだ。
そんな鬱屈として持て余した時間の中で、
俺はテレビカードを買って病室のテレビを見たり、
差し入れられたジャンプを読んだりと、
許される限りのいくつかの手段の中で時間を潰していたわけなのだが、
その中でもラジオは割合が多く、毎日のようにお世話になっていたものだ。
まあ、退院して以降は放送で知った曲やアーティストをインターネットで調べる程度になり、
すっかりご無沙汰していたのだが・・・
しかし、今回の連載をきっかけに、
俺が”防災用”も兼ねて外出時に持ち歩いている鞄の奥から、
その時使っていた”小型ラジオ”を久しぶりに取り出してみた。
深夜の部屋の中で一人、ラジオの周波数をザッピングしながら
水尾海月たちの日頃の行動とリンクさせてみると、
この日本のどこかに彼女らが”実在”し、
今も”微笑ましい日常”を繰り広げているのではないかという気になってくる。
その思い込みは、暗闇の中のひとつの「太陽」となり、冷え切った俺の心を温めてくれた。
”普段の生活では得られない感情”を与えてくれた水尾海月との出会いに感謝する。
かつてのラジオと、いまの海月――
俺はその両方に報いたいと思い、アンケートは1位で入れさせてもらった。
『さむわんへるつ』が人気になれば、
海月はまさに、人々にとっての「月」のように身近な存在へと上り詰めるだろう。
そして、ラジオに興味を持ってくれる人間も、一人、また一人と増えていくはずだ。
だからこそ、俺はこの漫画を全力で応援していくぜ!!!
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