だめニンゲン記

冬月ユズキ

冬はスマホが壊れる話

冬はスマホが壊れるので、私は困っている。

11月16日のことである。

私がスマホを操作していた時、

唐突に液晶は剥がれた。基板ごと、ペリッと。

スマホは裂けるチーズみたいな壊れ方をした。

昨年の冬も、同様にスマホが壊れたことがある。

厳しい冬と書いて、「厳冬げんとう」という言葉があるように、スマホにとって冬は厳しすぎた。

そして、冬は寒さだけでなく、周りの人達も厳しくなる。



「お前の扱い方が悪いんじゃない?」



厳しい寒さと、厳しい正論は冬の風物詩だ。

皆、私が悪いという旨の正論を叩きつけてくる。

私は、メイビー悪くない。

こんな歯切れの悪い主張なのは、

自分がだめニンゲンだと自覚しているからだ。

本当はスマホが壊れた原因も心当たりがある。

スマホをジップロックに入れて風呂に持ち込んだり、外で落としてしまったことが原因で壊れてしまったのだろう。頭では自分が悪いと分かっているのだ。

だが、そんな正論は大嫌いだ。

正論が心にとって鋭いナイフだと知らない人間が振り回して、私を悲しい気持ちにさせるからだ。げきおこである。

図星をグリグリ突いて、正しいことしか言わない人と話している時、私はきまってヤミフクラガエルのような顔をしてしまう。

ちなみに、ヤミフクラガエルがどんな生物かというと、モチモチのまんじゅうに黒豆がついたようなカエルだ。ちょっと不機嫌な顔立ちである。

私が正論を嫌いな理由は他にもある。

正論は、息苦しいからだ。

この世で一番のだめニンゲンである私を超える者は、アジア、アメリカ、タンザニア、どこを探しても私を超えるダメ人間は出てこないだろう。

そんなだめニンゲンな私は、正論を押し付けられると無性にイライラして、その場を去りたくなる。正論が正しいみたいな顔をしやがって!

アンパンマンが老若男女に愛されているのは、

ご飯を奢ってくれるという寄り添いと、ある程度の悪さはちょっとした注意で済ましてくれる緩さがあるからなのだ。だが現実には、優しくて強いアンパンマンのような人間は残念ながら少ない。

Twitterで「政治」とか「炎上」とか調べて出てきたツイートのリプ欄を見たら、わかる。

正論は冷たく、人をイラつかせるだけである。

本当にその人を思っているのならば、

だめニンゲンに寄り添う感じで、対話をしてはどうだろうか。

でないと、そのうち相手との関係が割れてしまう。それこそ、スマホのようにパリッと。

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