トンデモ展開の飯テロ×笑いが絶妙な作品

タイトルのインパクトがものすごい作品です。
「ブラックホールに吸い込まれる」という危機的な状況において「カツ丼を食べる」。
その落差にあるユーモアが際立っています。
そして読んで驚くのは、このタイトルは比喩でも何でもなく、まさしくタイトルの通りの作品であることです。
つまり、ブラックホールに吸い込まれながらカツ丼を食べる話なのです。

こういったユーモアは作品全編に溢れています。
その状況でそこを心配するの? という主人公の懸念。
周囲の人、そして自分にも危険が迫り来る中、それでもカツ丼を食べ続けるという状況と行動のミスマッチ。
そして、ブラックホールにあらゆるものが飲み込まれる描写と同時並行で描かれるカツ丼の描写。
高い描写力で非常においしそうに描かれているからこそ、とぼけた味わいが強くなり、シュールな笑いがこみ上げてきます。

おいしそうな描写が、それだけに留まらず、作品の中で機能しているという点でも素晴らしいと思います。
しかも、「おいしさ」により喚起されやすい「感動」や「郷愁」ではなく、「笑い」を呼び起こすというのがハイセンス。
想像の遥か斜め上を行く飯テロとも言えるでしょう。

ラストも状況の深刻さと主人公の言動の落差がおかしみを生んでいます。
けれど、そこにどこか狂気めいたものを感じたのは私だけでしょうか。
ラストのセリフの後にある余韻には、とぼけた印象の可笑しさと共に、とぼけているからこその異様さが感じられ、良い意味でゾクリとなりました。

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