第13話 その後の二人は?

ーいらっしゃいませ〜ー


ーAラッシュの新曲はsugar-mush-roomコラボの…ー


ー本日は1階イベントスペースにて14:00よりイチロク・サイゼ先生のサイン会をー




「ではサインをお求めで新刊をお買いあげ下さいましたお客さまは此方にお並び下さい〜」


「先生、前回も凄く面白かったです!今回も楽しみです!頑張って下さい!」


「は〜い!有難うございます〜」


「今回の『ハルのマド』切なくて本当に泣けました〜」


「早速読んでくださって嬉しいです〜有難うござます〜」



「あれっ?もしかして田中くん?」


「ひいっ」


「うっそ!マジで!うわぁすげぇ!神が目の前に居るわ。今日イチでテンション上がった。握手して下さいっ!」


「そのやり取り…デジャブ感が凄いんですけど…河口さん…」


「お久しぶり!田中!あっイチロク先生か」


「ホントにお久しぶりだね〜後でお茶でもします?」


「あら。あの田中クンにナンパされるとは。あれから変われたのかしら。」


「じゃー16:00に上の階の喫茶店で〜」


「ハイハイ〜お待ちしておりますよ〜」




○○○○○○○○○○




卒業後河口さんと会う事はなかった。


俺は河口さんとの約束の事を何となく引きずっていた。


会う事もないし知らんぷりしてなかった事にしても良かったのかも知れないけど決死の行動を無かった事にする気になれなかった。


何となく河口さんが本当に喜ぶ作品が作ってみたくなってチョコチョコ色んな小説を書く様になった。


公平な評価を知りたくてネットにアップして行った。

その内出版社から声を掛けてもらって本を出す迄に至った。

今回出した本は本屋大賞にノミネートして貰えた。


河口さんが俺の言葉で編集者を目指したが、俺も結局河口さんの言葉に導かれる様に作家の道に進んだ。


河口さんは意志を持って進路を決めていたが俺は何となく流されるままこんな状況となっている。


なんだかパワフルで強い光みたいな、引力を持った人だなと河口さんについて思う。


卒業の時の告白も俺が同じ立場なら出来なかっただろう。


本人は学生の頃は自分の好きな事も隠しひたすら目立たないようにひっそりしていたが、今は伸び伸びと自分を隠さずやれているのだろうか?

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